第9話

作:薊(超芝村的制作委員会)


1 幕間





神楽ちゃんがすみれちゃんに連れられて、保健室に退場した後も妙な空気が流れていた。

第一試合から、なんだか大変な事になってしまって・・・はっきり言ってあれは僕にとっては目に毒だ・・・・

まさかあんな・・・シーンを、しかもこんな所で見ることになるなんて・・・・・・

当の美奈子ちゃんはというと、すっかり上機嫌でぱたぱたと小学生組の所に戻っていったけど・・・

屈託無い感じで何やら楽しそうに話しかけてるけど、弥生ちゃんも流花もやや引き気味に見える。

あんな試合を見せられた後だから、まぁ当然なんだけど・・・・・

「なんだか、凄い事になっちゃったね」

と、苦笑いしながら綾乃ちゃんに話し掛けた。

「朔夜君は他人事だからそうやって笑ってるけど、もし決勝まで美奈子ちゃんが残ってきたら・・・私が試合しなくちゃいけないのよ!朔夜君は私が神楽ちゃんみたいな目に合わされても良いっていうの!」

綾乃ちゃんが真面目な顔で怒る。

「いや・・・その・・・他人事とかそういうんじゃなくて・・・それにまだ、一回戦も終わってないんだし・・・」

「だって私が勝つもの」

さも、当たり前のように言い切る綾乃ちゃん

「・・・・・」

僕のことは、眼中にないみたいだね・・・・

「まったく・・・とんでもない娘ね・・・」

丁度その時奈々子さんがリングから降りて僕達の方にやってきた。

「先輩、絶対美奈子ちゃんに勝ってくださいね! 私美奈子ちゃんとやるの絶対に嫌です・・・」

綾乃ちゃんが勝手な話を唐突に切り出した

綾乃ちゃんは、弥生ちゃんまで眼中にないみたいだ・・・

「まぁ〜できれば私もやりたくないけど・・・二度と悪さ出来ないようコテンパンにしてやるわ それより綾乃ちゃん決勝は覚悟しておきなさい」

「負けませんよ!」

いつのまにか二人して勝手な想定で火花を散らしている・・・おーい・・・

「いや・・・奈々子さんもまだ弥生ちゃんとの試合がこれからあるし・・・綾乃ちゃんだってまだ・・・」

とりあえず二人にツッコミをいれるけど・・・・

「私が負ける訳ないじゃない」

「だから、私が勝つもの」

「・・・・・・」

言っても無駄か・・・ハァ〜・・・

「・・・じゃぁ、そろそろ次の試合を」

ぼくはみんなに呼びかける

これ以上何か言っても無駄だし・・・・試合でハッキリさせればいいや・・・・





2 優勝商品は?






(解説 奈々子)

「そうね、私はいつでもいいけど 弥生ちゃんはよろしいかしら? それともまだやめとく?」

私はわざと挑発するように言う

すると、座りながら流花ちゃんと美奈子ちゃんの三人で話していた弥生ちゃんは、

「・・・・・・・私もいつでも構いません」

私を睨みながら立ち上がる

敵意むき出しね〜〜こうゆー目をされると、余計にからかいたくなるのよね〜

「弥生ちゃん、神楽ちゃんのだけどコレ貸してもらいなよ」

朔夜くんが、弥生ちゃんに神楽ちゃんのオープンフィンガーグローブを差し出した

「奈々子さん相手だから、これ使った方がいいよ」

なるほど、たしかにそれぐらいしないと勝つのは無理よね〜、でもやられるつもりもないけど

でも弥生ちゃんは、

「いえ、私にハンデは必要ないです」

キッパリと断っちゃった

「今まで通りのやり方で勝ちます!」

だって♪

「後悔しても知らないわよ〜〜」

「しません!」

ふふふ、弥生ちゃんってけっこう頑固なのね

「わ・・・わかった、とにかくがんばって」

と、朔夜くん

と、一つ言い忘れてたわ

「あ、そーだ! みんな・・・っていっても、美奈子ちゃんは興味ないだろうけど」

「どうかしたの?」

と、流花ちゃん

「実はね、優勝した女の子には〜」

「優勝すると?」

「朔夜くんと一日デート権がつきまーーす!!」

そう言ってあげた

すると、

「ええーーーー!!」
「ぶーーーーーー!!!」

綾乃ちゃん流花ちゃん、そして弥生ちゃんと朔夜くん本人が目を見開いた

美奈子ちゃんはブーイングしていたけど・・・・

「美奈子ちゃんには、言っていないわよ! で、他のみんなはどうかしら? 綾乃ちゃんはOK?」

「え?・・・・・・あ・・その・・・・・・私は・・構わないですけど・・・・・」

朔夜くんの彼女(?)である綾乃ちゃんとしては、複雑な気持ちよね〜♪

それに、もし綾乃ちゃんが王者になった場合は、普段どおりの事だからあまりうれしくないわよね・・・・

「流花はいいよ〜」

流花ちゃんはOKみたい・・・・というよりも、あまり深くは考えていないみたいね・・・兄妹だし

「弥生ちゃんはどうする?」

そう聞いてあげると、

「・・・・・・・・・わ・・・私も・・・かまわないです・・・・・けど・・・」

顔を赤くして、ちょっと困ったように言う

「だったらいいわね? それじゃ、始めましょうか? 弥生ちゃんには私のためにやられてもらうから」

そう言ってあげると、

「その言葉、そっくりそのままお返しします!!」

ムキになって言い返す弥生ちゃん

そこへ、

「あ・・・あの〜〜・・・ぼくの意見は?」

と、恐る恐る聞いてきたんだけど、

「生憎、朔夜くんには拒否権ないの」

と、爽やかに無視してあげる♪

「え・・・・・・・それじゃ、ぼくが優勝した場合は?」

あ・・・そうか・・・・それを忘れていたわね・・・・・

朔夜くんの場合は〜・・・・

「そうね〜〜・・・・その場合は・・・・・・そうね、次のシリーズはみんながビキニの水着で試合してあげる♪」

「えええーーーーー!?」

「あ〜んそれミナも大歓迎ですぅ〜・・・あ、でもそこのクリーチャーとだけは絶対試合しませんけど」

一人を除いて慌てるみんなに、

「彼が優勝したらだから♪ 」

と、勝手に決めちゃう!

ちなみに、この場にいないすみれちゃんはどうでもいいの

どうせ文句言いながらも、それに従わざるを得ないんだし、そもそも優勝なんて私がさせないし

でも万が一の場合、すみれちゃんにはそれ用のコスを作ってもらうことになるわね

・・・・ちょっと興味あるかも。あ、神楽ちゃんは・・・今のセパレートの水着とそんなに大差無い・・・事も無いけど・・・ね・・・ま、まぁいいでしょ。細かい事は気にしない気にしない。

「はい決定ーー! というわけで、弥生ちゃん準備してね〜 綾乃ちゃんはレフリーよろしくー!」

そう言うと、リングをおりる

これもまた面白くなってきたわね〜〜♪


「あ・・・あの・・・・」

朔夜くんがなにか言いたそうだけど、

「いいからいいから♪」

って、流しちゃう!

そんなとき、

「お兄さん! この試合、私のセコンドについてください!!」

今まで私を睨みつけていた弥生ちゃんが、そんなこと言い出したの!

「え!?・・・セコンド?・・・・・まぁ、構わないけど・・・・・・」

「それじゃ、一緒に来てください!」

そして、朔夜くんの腕を掴んで更衣室へと向かう

「ちょ・・・ちょっと弥生ちゃん!」

「ま・・・待って!」

慌てる綾乃ちゃんと、朔夜くん

「綾乃さん、お借りします!!」

ギロッと睨む弥生ちゃんの迫力に、綾乃ちゃんも・・・・・

「ど・・・どうぞ・・・・」

と、素直に(?)差し出しちゃった・・・・・

「ちょ・・・ちょっと弥生ちゃん?・・・・・着替えるのに、ぼくが入るのは・・・・・」

「すでに着込んでいます!」

速攻で答える弥生ちゃん

まったく、あーんなに怒っちゃって面白いわね〜〜

でも、朔夜くんは私のセコンドにしたかったけど・・・・・

ちょ〜っと許せないわね〜

・・・・・・・・・・・・

・・・・まあ、いいわ

朔夜くんの前で、派手に倒してあげるから♪




3 各コーナー控え室





(解説 朔夜)

ぼくと弥生ちゃんが更衣室に入ると、弥生ちゃんは置いておいたバッグから空手着を
取り出した

「あの・・・・・弥生ちゃん?」

ぼくは、恐る恐る弥生ちゃんに声をかける

「・・・・・・何でしょう」

弥生ちゃんが、ギロッとぼくを睨んだ

「あ・・・いや・・・・・その・・・・・・・やっぱり、少し落ち着いたほうがいいよ・・・・」

「・・・・・・・」

「いや・・・・だからさ・・・・・えっと・・・・奈々子さんに挑発されて怒るのもわかるけど・・・・・・平常心でいかないと、勝てないんじゃないかな〜〜っと・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

でも弥生ちゃんは、ぼくを睨み続ける・・・・

ああ・・・・・今日の弥生ちゃんは、一番怖い・・・・・・

「・・・・・・・そうですね」

え?

「すみません・・・私カッとなっちゃって・・・・・」

弥生ちゃんは心底申し訳なさそうに言いながら、水着の上から空手着の上着だけ着る

「やっぱり平常心が大切ですよね」

いつもの微笑みを浮かべてそう言うと弥生ちゃんは帯を締め、その場で構えると、

「こぉぉぉぉ・・・・・・」

息吹きを始めた

その立ち方、そして動き・・・流派の違うぼくから見ても、良い動きだと感じた

そういえば流花から聞いた話では、弥生ちゃんの流派・・・・実戦空手「聖拳塾」の大会では結構良い成績を残していると聞いたことがある

ぼくも弥生ちゃんと知り合ってから、何度か骨法の動きを教えてあげたことあるし、大会が近くなったときに組み手の相手したこともある


「・・・・・」

弥生ちゃんが動きを止めて、ぼくへと向き直る

「私・・・・これまでは格下のやられ役ぐらいに思われてたかもしれないけど・・・・・・今回でそれを返上します!」

ゆっくりと、型を始めた

まるで太極拳みたいに

実際、型やシャドーなどは特に素早くやる必要もなく、このようにゆっくりやると・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、薀蓄はどうでもいいや

「だから絶対に・・・・・・・・・・・・・いえ、私のやりかたであの人にぶつかっていきます!!」

いつの間にか、弥生ちゃんの表情は清々しい顔になっていた

「うん、弥生ちゃん良い顔になったよ 変に気張るよりも、そうやって弥生ちゃんらしく行くべきだよ」

「で、お兄さん」

「ん?」

「必勝祈願に・・・・・・・・キス・・・・・してもらって・・・・・・・いいですか?」

「ええっ!!」

必勝祈願のキスって・・・・たしか、随分前に一度・・・・弥生ちゃんからされたよね?・・・・・

「そそそ・・・それは・・・・・・・・・」

「ダメ・・・・・です・・・か?」

弥生ちゃんは悲しそうに言う

「あ・・・いや、そうじゃなくて・・・・・・・ほら、たしかあのときは負けちゃったし・・・・・・・だから、ちょっとな〜って・・・・・」

「そうですか・・・・・・・それじゃ、もし私が優勝してお兄さんとデートできたら、そのときに・・・・・・・いいですか?」

今度は上目でぼくを見る

そんな目をされると・・・・・・うう〜・・

「あ・・・う・・うん・・・・そのときにね」

思わずそう答えちゃった・・・・ぼくが優勝するつもりなのに・・・・・

でも、強引とはいえ・・・弥生ちゃんのセコンドについたんだから、安心というか気合を入れるため方便も必要かもしれないし・・・・・

「だ・・・だから、がんばってね!」

「押忍っ!!」



〜赤コーナー控え室〜
(解説 奈々子)

私は入場用のコスに着替え終わって、用具室で待機していたの

今回のコスは、着物に割烹着・・頭にリボンというある同人ゲームのキャラクターのコスプレ♪

しかも、竹箒のオマケ付き!

この間朔夜くんが話していたゲームのキャラクターなんだけど朔夜くん喜んでくれるかな?

「奈々子お姉さまぁ〜〜準備はよろしいですかぁ〜〜?」

いきなり、ドアの向こうから美奈子ちゃんの声がした

「い・・いいけど・・・・」

「わかりましたぁ〜〜お姉さまぁ〜・・・それじゃ二回戦でミナまってますからぁ♪」

そう言われた瞬間、背中に寒気が・・・・・

美奈子ちゃんなんかとは、絶対にやりたくないわよ!!・・・・・でも、負けるのは嫌!!

「いいわよ、神楽ちゃんの仇打ってあげるから・・・・覚悟はできてるんでしょうね?」

「ああ〜ん因縁めいた対決って運命的でステキですぅ。ミナがすっっっごく良くシテあげますね」

そう言って、美奈子ちゃんは離れていった

まったく・・・あの娘は絶対にただでは済まさないんだから!!




4 入場!



(解説 朔夜)

「それじゃ、がんばってね!」

始まりを知らせに来た流花が、席の方へと戻っていった

「弥生ちゃん、いよいよだね」

「はい、がんばります!!」

弥生ちゃんも気合十分!

でも・・・・さすがに奈々子さんを相手にするのは厳しいだろうな〜〜

ぼくも奈々子さんに勝った回数よりも、負けた回数のほうが多いし・・・・・

そう考えていると、

「それでは、青コーナーより・・・川元弥生選手の入場です!!」

と、綾乃ちゃんのコールが響いた

「弥生ちゃん!」

ぼくはドアを開ける

「はい」

弥生ちゃんは、ドアからでてリングへと歩いていく

そして、その後ろに続くぼく

でも、用具室をでた弥生ちゃんは、なんかすごく落ち着いていた

余計な力は入ってないし、試合が始まってもこの調子でいけばいいんだけど・・・


(解説 奈々子)

弥生ちゃんはリングインしたようね

お次は私の番ね♪

あー早くやりたいわね〜!

今日は最短記録で、あのお子様をマットに沈めてあげるんだから

「それでは、赤コーナーより・・・・・」

あ、私の番ね!

「城之内奈々子選手の入場です!!」

そして、音楽が流れ出し・・・・私は竹箒をもってドアをあけ、そのままリングへと歩き出した

すると最初に目に付いたのは〜

「なっ!?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

朔夜くんの驚いた顔だったの♪

まさか私が『月○』の琥○のコスプレで入場してくるとは、夢にも思わなかったでしょうね♪

そういえば、そのゲームはアニメにもなったとか言っていたわね・・・・今度朔夜くんにDVDでも持ってきてもらって、ここのデッキで見ようかしら?

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

しかし、朔夜くんだけじゃなく・・・みんなも唖然としているわね・・・・

さっきまでこっちを睨んでいた弥生ちゃんまでもが、口あけてポカーンとしているし

たしかに、みんなも私がこんな格好で入場してくるとは思わないでしょうね


とりあえず・・・・リングイン!


リングインした私は、いつものように空手着を着ている弥生ちゃんと、向かい合っている

そして、ジッと私を睨む弥生ちゃんを見ていたら、またからかいたくなってきちゃった♪

「どう朔夜くん、この格好は? 似合う?」

「え?・・・あ・・・はい・・その格好はたしか・・・・」

「そう、前に話してくれたあのゲームのキャラクター♪ 朔夜くんに喜んでもらおうと作ってみたの♪」

そう言って、ウインクしてあげる

「・・・・・・はあ・・・」

どう反応したらいいか困っているみたいね

そうしたら、弥生ちゃん・・・・いえ、綾乃ちゃんと流花ちゃんまで朔夜くんを睨みだしちゃった♪

そして、そんな空気のまま、

「青コーナー・・・空手クイーーン・・・・川元ーーーー弥生ーーーーー!!」

綾乃ちゃんが不機嫌にコール!

そしてその瞬間、弥生ちゃんは空手着を脱ぎ捨てた!!

「弥生ちゃんがんばってーー!!」

「ミナのためにある程度はダメージ与えておいてね〜」

流花ちゃんと美奈子ちゃんが声援(?)を送る

そして、次は私ね

「赤コーナー・・・割烹着の魔女・・・・城之内ーーー奈々子ーーーーー!!!」

割烹着の魔女なんて、けっこう言ってくれるわね・・・・でも、何気に気に入っちゃった♪

綾乃ちゃんのコールに、私は・・・

「フフフ・・・」

怪しく微笑みながら、ゆっくりと割烹着を脱ぎ・・・着物を脱いでいく

その間、朔夜くんを始めみんなの・・・・特に、美奈子ちゃんの視線がすごいわね・・・・・

「お姉さまぁ〜〜〜素敵ーーーー!!」

みんな私のプロポーションにク・ギ・ヅ・ケ♪

・・・・・美奈子ちゃんに見られるのは複雑だけど・・・・

悪くないわね〜

でも、弥生ちゃんは嫉妬というかんじだけど♪

「フフ」

私は最後に髪を束ねていたリボンをはずして、髪型をいつものロングのストレートに戻す

これで準備はOK!

「いつでもいいわよ」

「・・・・・・・・」

弥生ちゃんは、私を睨んだまま動かない

「それじゃ、いきますよ・・・・・ファイッ!!」

綾乃ちゃんが、試合開始の合図をした!




5 一回戦第二試合 弥生 vs 奈々子






さて・・・どうしてあげようかしら?

最初からラリアートでKOしちゃってもいいんだけど、それだと面白くないわよね〜

少し痛めつけてから、あっさりとKOの方が喜んでもらえそうだし・・・弥生ちゃんの打撃に気をつけながら・・・・

「・・・・・・・・・・・」

無言で構える弥生ちゃんへ、

「えいっ!」

私はローキックを放つ!

私は打撃は苦手だし練習もしていないから、はっきり言って素人のキックだけど、牽制にはなるわよ

「・・・・」

弥生ちゃんは、気にもしていないような表情で足を上げてガード

その瞬間、私は弥生ちゃんに組み付いて行く!

だけど、同時に弥生ちゃんの足が動いて・・・・


(解説 朔夜)

「うぐっ!!」

組み付いた奈々子さんが、鈍い悲鳴と共に体をくの字に曲げた

ぼくの角度からはわからないけれど、多分膝が入ったんだろうな・・・・

「相手を格下だと思って、油断するとこうなるんですっ!!」

奈々子さんに向かって怒鳴ると、奈々子さんの首に腕を巻きつける弥生ちゃん

もしかして・・・・いきなりアレを出すつもりとか!?

「このっ!!」

ジャンプして、急降下で奈々子さんの頭をマットに叩きつけた!!

ジャンピングDDT!!

「あうううーー!!」

大の字に倒れる奈々子さん

いきなり得意技を出してくるなんて、弥生ちゃん最初から全力なんだ・・・・・

「起きなさい!!」

弥生ちゃんは、奈々子さんの髪を掴んで引き起こす!

「ちょ・・いたいわよっ!!」

奈々子さんが、すかさず反撃しようとするけど、

「いたっ!!」

それよりも早く弥生ちゃんのローキックが、奈々子さんの足に炸裂した!!

そしてグラッときた奈々子さんの腹部へ、髪を掴んだままミドルキックを連続で叩き込んでいく!

「このっ!このっ!このっ!」

「あうっ!くうっ・・・うぐ・・・・」

髪をつかまれる痛み、そして蹴りの痛みで涙を流す奈々子さん

いきなり奈々子さんをここまで追い詰めるなんて・・・

もしかして、弥生ちゃんキレてる?

「いいぞー弥生ちゃーーん!!」

流花が弥生ちゃんを応援する

「あ〜ん・・お姉さまー悶える姿もすてきぃ〜〜・・・」

美奈子ちゃんのは声援なのかな?・・・

「せいやーーっ!!」

気合と同時に、弥生ちゃんの強烈なハイキックが奈々子さんにヒット!!

「ぐっ!!」

奈々子さん、ダウン!!

そして、唖然となるぼくたち・・・・・・・

こんな短時間で、奈々子さんをダウンさせるなんて・・・・・・・・

それに、今のハイキックはきれいに入ったし、もしかしたら・・・・・

「ダウンッ!!」

綾乃ちゃんがカウントを数え始めた

「ワン・・・・・ツー・・・・・スリー・・・」

その間弥生ちゃんは、奈々子さんのすぐ近くで冷たく見下ろしている

「終わりです」とでも言っているみたいだけど・・・・・もしかしたら、まだ・・・


「シックス・・・・」

そのとき・・・


6 パワー!!



ガシッ

「キャッ!?」

ダウンしている奈々子さんの手が、弥生ちゃんの方足を掴んだ!

そして、

「よくもやってくれたわね〜〜〜!!」

弥生ちゃんの足を、勢いよく持ち上げた!

「あっ!!」

倒れる弥生ちゃん

そこへ、

「散々蹴りまくってくれたじゃない!」

奈々子さんは、弥生ちゃんの足を蹴りまくる

「悪いのは、この足かしら?」

そう言って、バシバシと蹴りまくる

「う・・・く・・痛っ!!・・・・」

逃げることができずに、体を丸めて堪える弥生ちゃん

あの体勢だと、奈々子さんの足を掴むことは難しいし・・・・


「ほら、起きなさい!!」

「くっ!」

奈々子さんは、弥生ちゃんの頭を平手で叩くと、髪を掴んで立ち上がらせた

そして、フラフラと立ち上がった弥生ちゃんを髪をさらに引っ張って顔を上げさせる

おびえた表情の弥生ちゃん

「フフ・・・痛い?」

弥生ちゃんに顔を近づけて訊くと、

「まだ続くわよ♪」

弥生ちゃんを起こすと、もう片方の左腕で弥生ちゃんの首を掴んだ

「うぐっ!!」

でもそれだけじゃ終わらず・・・・・・


「んんんんのぉぉぉぉぉ・・・・・!」

「あああーーー!!!」

思わずぼく達は声を挙げた

奈々子さんは、左腕だけで弥生ちゃんの首を掴んで持ち上げたんだ!

「ぐう・・・ああああ・・・・・・・」

片手式のネックハンギングツリー・・・奈々子さんすごい力だ・・・

宙吊りにされた弥生ちゃんは、なんとか奈々子さんの手から逃れようとジタバタするけど、奈々子さんの手を外すことは出来なかった

「がは・・・・・・・・か・・・・・・く・・・・苦しい・・・・・・」

「う〜ん、いい表情ね弥生ちゃん もぉ〜っといじめたくなるわね〜」

苦しさのあまり、もがいている弥生ちゃんを嘲笑う奈々子さん

「あまり苦しめると落ちちゃいそうだし〜 楽にしてあげるわね」


そう言うと、弥生ちゃんをそのままマットに叩き付けた!!

あれは・・・ワンハンドチョークスラム!

「グッフウゥゥーーーーー!!」

鈍い悲鳴を上げる弥生ちゃん

あの技は強烈なんだ・・・

ぼくも何度か奈々子さんと試合してくらっているから、よくわかる

「弥生ちゃん!!」

ぼくと流花が叫んだ

弥生ちゃんは、よほど苦しかったらしく悶絶している

「はい、フォール」

奈々子さんが体固めに入る

「ワン・・・・・ツー・・・・・」

しかし弥生ちゃんは、かろうじて返すことが出来た

「かは・・・・かは・・・・」

うつぶせになり、咳き込む弥生ちゃん

「あら? まだ返せたの?」

ちょっと驚いたみたい

たしかに、ぼくもあれで終わったと思った

「朔夜くんがセコンドについてくれているからって、がんばっちゃって・・・・・・」

そしてぼくの方へ向き、

「朔夜くん・・・・次の試合は私のセコンドよろしくね・・・・・フフ」

ぞくっとするような微笑みでそう言った

「く・・・・そんな・・・ことは・・・・・・」

弥生ちゃんが、起き上がろうとする

「するわよ!」

奈々子さんはロープに走り、反動で戻ってきてケンカキックのみたいに弥生ちゃんを蹴飛ばした!

「キャアアーーー!!」

弥生ちゃんダウン!・・・これはちょっとヤバイかな・・・



(解説 奈々子)
全く・・・トーナメントだし無駄な体力を使わないように速攻でカタをつけるつもりだったのに、無駄な抵抗してくれちゃって・・・・!

頭きちゃったから、もう少しいたぶってあげないとね

起き上がれずに倒れている弥生ちゃんの胸元をグリグリと踏みつける

「どうしたの? もう降参?」

「く・・・」

弥生ちゃんは私を睨みながら、足をどかそうとする

「あら? まだやるの? 無駄なのにね〜」

踏む足に更に体重をかけて弥生ちゃんの抵抗を抑え込んでから、もう一度足を上げて今度は弥生ちゃんのお腹に踏みおろす

「!!がはっ・・・・・」

乾いた悲鳴を上げてもがく弥生ちゃん。そうそう、やっぱりこうでなくっちゃ♪

「ほら、いつまで寝てるつもり」

髪を掴んで弥生ちゃんを引き起こす。まぁ、お子様にしては頑張ったとは思うけど、もう終わりね。

「さーていくわよ〜〜♪」

私は左腕を上げ、腕に嵌めているサポーターをちょっと引っ張ってみせる

「ああ!!あれをだすつもりだーー!!」

と、流花ちゃんが叫んだ

このスタン・ハンセンみたいなしぐさからでもわかるように、最近の必殺技は左ラリアート

私が入ってから、綾乃ちゃんと流花ちゃんがこれの餌食になっているの♪

実は物語中には出てこなかったけど、朔夜くんと神楽ちゃんの試合の前に、私と弥生ちゃん組VS綾乃ちゃん・流花ちゃん組とやったんだけど、その際に流花ちゃんと綾乃ちゃんをラリアートで倒していたのよね〜♪

そして、今回はこれで弥生ちゃんを仕留めてア・ゲ・ル

「くらいなさいっ!!」

私は弥生ちゃんをロープへと振って、私もロープへと走る

そして、フラフラと戻ってきた弥生ちゃんに、ラリアートをしようとした途端、

「えっ!?」

弥生ちゃんが飛んだ!


「アアアーーー!!」

強烈な衝撃と共に、ダウンする私・・・・

油断したわ・・・・・このタイミングでニールキックを放ってくるなんて・・・

でも、このままグランドにもっていって・・・・って、ええ!?

「まだ終わらせませんよ!」

いつの間にか弥生ちゃんに上体を起こされていた!

それだけじゃなく、素早く私の首に腕を巻きつけてきたの!!

「このっ! 放しなさい!」

私は振りほどこうと体を回転させるけど、弥生ちゃんは組み付いたまま放さない

それどころか、私の胴体を足で挟んだ!

胴締めスリーパー!!

「無駄です!!」

そういって、自分ごと仰向けに倒れる!

そのせいで私の首に巻きついた腕が、完全に私の首を絞めることになっちゃった・・・・・

「うぐぐ・・・・ぐぐ・・・・」

「ギブしなさい!!」

私の耳元で怒鳴る弥生ちゃん

小学生の力でも、馬鹿にはできないわね・・・・・けっこう・・・苦し・・・・

空手・・・やってるだけは・・・あるわよね・・・・・

でもね・・

「う・・うるさいわよ!!」

「えっ!?」

私は、弥生ちゃんの腕を強引に外した!

「何をやっても、私のパワーには及ばないのよ!」

でも、弥生ちゃんの足はしぶとく巻きついたまま・・・だったら!



7 一閃




(解説 朔夜)
「離れろ弥生ちゃん!!」

ぼくは思わず叫んだ!

奈々子さんが巻きついた弥生ちゃんの足を持ったまま、逆エビの体勢へ持っていこう
としていたんだ

「あ・・・・く・・・・」

すかさず逃げようとする弥生ちゃん

しかし、奈々子さんは掴んだまま放さない

このままだと、完全に極められる・・・

「このっ!」

いきなり弥生ちゃんが、手刀を放った!

その手刀は奈々子さんの腕に当り、

「っ!・・」

その一撃で、奈々子さんの腕の力が一瞬緩んだ

弥生ちゃんはその隙に片足を抜け出し、その足で回し蹴りを放つ!

奈々子さんはかろうじてかわすけど、同時に抱えていた足を放した!!

「今だ、逃げろ弥生ちゃん!」

「はいっ!!」

すかさず逃げる弥生ちゃん

そして立ち上がって、間合いを取る

しかし、

「待ちなさい!!」

奈々子さんは既に立ち上がっていて、弥生ちゃんへ向かって突進してきていた!

同時に、奈々子さんの左腕が動いた

電光石火の左ラリアート!!

その時、

「ああっ!?」

弥生ちゃんが飛んだ!!

そして・・・・

「ハアッ!!」

気合と同時に、飛び後ろ回し蹴りが一閃!!


              バキィィッ!!!


弥生ちゃん渾身の一撃が、奈々子さんの側頭部にヒットした!!

「がっ!!・・・・・・・・・・」

蹴りを食らった奈々子さんは、信じられないというような表情で、そのまま大きく横へ倒れた・・・・・・・・・


「え・・・・・あ・・・・・・・・・」

一瞬の出来事に、ぼくは唖然としていた

いや、ぼくだけじゃなく・・・ここにいたみんなそうだった・・・・・・

弥生ちゃんの一撃で、奈々子さんがダウンしちゃうなんて・・・・・・おまけに、さっきから奈々子さん動かないし・・・

そ・・・そうだ!

「綾乃ちゃん・・・・あの・・・カウント・・」

ぼくは、綾乃ちゃんに声をかける

「え!?・・・あ・・・・・」

綾乃ちゃんはわれに返って、急いで奈々子さんの元へと駆け寄る

その間も弥生ちゃんは、構えたままだった

そして綾乃ちゃん曰く・・・・・

「奈々子さん・・・完全にのびちゃってる・・・・・・・」




川元弥生 (6分18秒 KO)
(龍閃脚)
城之内奈々子×





8 リベンジ達成





「あ!神楽ちゃん!もう大丈夫なの?」

出入り口付近に居た流花が声を上げたのでそちらを見ると、神楽ちゃんが一人で戻ってきた所だった。

「え?ああ、うん・・・大丈夫。すみれはちょっと用があるからって・・・ええっ!?・・・奈々子先輩気絶してるよ・・・・・綾乃、なにがあったの?もう終わっちゃったとか?」

保健室から戻ってきた神楽ちゃんが、奈々子さんを見て呆然とした

「ええ。私が勝ちました」

弥生ちゃんが言う。

「ええ!? 弥生ちゃんがっ!?」

「はい、私の飛び後ろ回し蹴りで」

「もしかして、一撃KO!?」

「はい・・・でも、その前に私もやられそうになりましたけど・・・・・」

信じられないと言う表情で弥生ちゃんを見る

てゆーか、間近で見ていたぼくも信じられないんだけど・・・・・

「私間近で見ていたんだけど、カウンターできまってそのまま・・・・」

と、綾乃ちゃん

そこへ、

「それよりも、奈々子ちゃん起こさなくていいの?」

流花がそう言い出した

「そうだ! 奈々子さーん!!」

ぼくは、慌てて奈々子さんへ駆け寄った

奈々子さんは完全にノビちゃっていて、返事がない

「奈々子さーん 奈々子さーん!」

ぼくは奈々子さんを揺すってみる

それにしても、幽霊でもKOされることがあるんだね・・・・・

もしかしたら、本当はいきているとか・・・それとも、幽霊を超えちゃった存在になっているのかもしれない・・・・・


「ん・・・・・」

奈々子さんがゆっくりと目を開けた

「奈々子さん、大丈夫?」

「先輩、しっかりしてください!」

ぼくと綾乃ちゃんが、奈々子さんの上体を起こす

「あ・・・・・朔夜くん・・・・・・・ん・・・・あれ?」

「奈々子先輩、生きてますか?」

神楽ちゃん、生憎と奈々子さんはすでに死んでいるんだよ・・・・・

言えないけど

「う・・うん・・・・私・・・どうしたの?」

自分がKOされたことも覚えてないみたい

「奈々子さんは、弥生ちゃんの飛び後ろ回し蹴りで・・・」

と、綾乃ちゃん

「奈々子お姉さまぁ〜〜いたくないですかぁ〜? ミナが手当てしてあげますぅ〜〜」

美奈子ちゃんがリングに上がってきた

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?・・・・・・・・・・・・」

絶句する奈々子さん

「もしかして・・・・・・・私・・・・・・・・・・・弥生ちゃんに・・・・・・・・・・・・・・・・・負けちゃったの?」

「そうですよ、KOで私が勝ちました! この間のリベンジはさせてもらいましたから!」

そう言い放つ弥生ちゃん

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

長い沈黙の後、


                          

                            パタン




奈々子さんが、また倒れちゃった!

「奈々子さん!!」

「先輩っ!!」

「お姉さまぁ〜〜」

「奈々子先輩!!」

「奈々子ちゃん!!」

弥生ちゃん以外、全員が奈々子さんの周りに駆け寄った!

しかし奈々子さんは、

「弥生ちゃんに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・負けちゃった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この私が・・・・・・・・・・・・」

夢遊病みたいにブツブツとつぶやき続ける

「奈々子ちゃん・・・弥生ちゃんのキックで壊れちゃった・・・・・」

「ちょっと・・・先輩っ!!」

「奈々子さん、しっかり!!」

奈々子さんの肩を揺らすけど、糸の切れたマリオネットみたいになすがままになっている・・・・・・

「どけっ!!」

不意に美奈子ちゃんに蹴飛ばされた!

「あたーー!! ちょっ・・・なにするんだよ美奈子ちゃん!?」

「あんたは邪魔!奈々子お姉さまに触るな!!」

シッシッと手を振る美奈子ちゃん・・・・・

ぼくは野良犬か・・・・・

すると今度は、

「お兄さん、退場しますよ!! 負けた人は放っておきましょう!!」

「え!? 弥生ちゃんっ!?」

弥生ちゃんはぼくを強引に立ち上がらせて、そのままぼくを引っ張ってリングを降りる

「お兄さんは私のセコンドなんですから、奈々子さんなんかに構わないでください!!」

怒って言う弥生ちゃん

そしてぼくは、少し怖くなって弥生ちゃんに何もいえなかった・・・・・・

しかし、いきなりとんでもない事態になっちゃったな・・・・・・・

どうしよう・・・次はぼくの出番なんだけど・・・奈々子さんが・・・・・・・

「奈々子お姉さまぁ〜〜ん、ミナが心臓マッサージと人工呼吸してあげますぅ♪」

「こんなときに何やってんだ!!」

「あ〜神楽お姉さまぁ〜〜ヤキモチですかぁ〜?カワイイ!」

「抱きつくなーー!!・・・あっやめ・・・ああっ◎×▲□☆ЮБж!!!」

このままだと収集つかないから・・・ここは、次回につづくということで・・・・・・・・


〜つづく〜


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