第5話
作:薊(超芝村的制作委員会)



1 ぼくのせい?



「そりゃ〜気付くわよ・・歓声あげていたし」

と、綾乃ちゃん。
そして、

「それにしても、よく逃げずに来たね」

挑発するように言ったの。
神楽ちゃんは、ふふんと笑うと、

「そっちもね」

と、余裕な表情で言い返してきたの。
二人して、早くも火花を散らしているわね〜

この状況に、流花ちゃんと弥生ちゃんはワクワクしているみたいね。
なんか、うれしそうに様子を見ているし。

困っているのは、朔夜くんだけだし〜・・フフ

でも一人・・・

「・・・・・・・・」

すみれちゃんが、私をジーっと見てるの。
挑戦的ていうか・・・恨みっていうか・・・そんな感じね。

フフ・・・あなたはもっと後にね♪

「まあまあ・・・・とにかく、今日はお互いに正々堂々と頼むよ・・・」

私も、ジャージを着ながら、

「そうよ、二人とも睨み合ってないで、アップとかしたほうがいいわよ」

と、言ってあげる。
すると、二人は、

「ふん」
「ふん」

とかいって、背を向けた。

そして神楽ちゃんに、

「はじめまして、私は『城ノ内 奈々子』 三年よ 今日はレフリーを務めさせていただくから、よろしくね」

と挨拶したの。

すると、神楽ちゃんも、

「山本神楽です、よろしくお願いします」

と、普通に挨拶してきたの。
もっと挑戦的な態度かな〜と、思っていたんだけどね。

「着替えとかは、あっちの用具室の方でお願いね」

と、私はもう一つの用具室を指差した。

「ジャージの下に着込んであるんで、着替えは必要ないですが・・アップしていますので、準備できたら呼んでください」

そう言って、すみれちゃんを連れて第二用具室へ行った。

「それじゃ、私もアップしよーっと」

神楽ちゃん達が第二用具室へ入ると、綾乃ちゃんがそういって第一用具室へと入っていった。

「流花たちも手伝うよ」

そう言って、流花ちゃんと弥生ちゃんも後に続く。
朔夜くんも、後に続くと思ったんだけど・・・綾乃ちゃん達が更衣室へ入るのを見送った後・・

「なんか・・・ぼくのせいで、こんなことになっちゃって・・・」

そう言い出してきた。

「どうしよう・・・やっぱり、あの時に無理にでも止めてれば・・・・」

なんか落ち込んでいる朔夜くんに、

「そんなに気にすること無いわよ、朔夜くんのせいじゃないわよ」

と言ってあげる。

「それに綾乃ちゃんだって、朔夜くんの為だけじゃないわよ」

「え?」

「見てわかんない?、綾乃ちゃん楽しそうじゃない」

「そ・・そうなんですか?」

「そうよ、綾乃ちゃんだってレスラーなんだから、強い相手と闘いたいと思っているはずよ・・」
「それが異種格闘技戦であってもね」

「はあ〜・・」

「とにかく、朔夜くんは綾乃ちゃんのセコンドについて、サポートしてあげなさい・・
 それによって綾乃ちゃんが普段以上の力をだせるんだから」

そう言うと、

「わ・・わかりました・・行ってきます」

朔夜くんは、慌てて用具室の方へ行った。

・・・・・・・・

・・・・・朔夜くんって、単純ね・・・・・

さっきの事は、嘘じゃないけど・・・・・今回の原因と言うか・・元凶は私なのよね〜

そうとも知らずに・・・フフフ


2 赤コーナー控え室



「さてと・・・私は・・」

私はみんなには、見えないようにして神楽ちゃんたちのいる第二用具室へと向かった。
そして、ドアをすり抜けて入ると・・・

「シュッ シュッ」

既にボクシンググローブを装着して、体操服にブルマーという姿の神楽ちゃんが、シャドーをしていたの。
そのとき、すみれちゃんが私の方を向いたけど・・すぐに神楽ちゃんのほうを向いて、

「神楽ちゃん・・・本当にやるの?」

と、神楽ちゃんに言った。
神楽ちゃんは、

「当たり前でしょ」

そう言いながら、シャドーを続ける。

「いくら、本気でプロレスやっていても、所詮はお遊びなんだから・・・
 何発か軽くジャブ打ち込めば降参するにきまってるよ」

「いや、そうじゃなくて〜」

すみれちゃんは、どうしても綾乃ちゃんたちと事を構えたくはないみたいね。
気持ちはわかるけど、それはもう無理なのよ〜
二人とも完全にやる気だし、なにより嫌でも私がそうさせるから・・フフ

とにかく、後は綾乃ちゃん達の方にも・・・・っと、そうだ〜
私は一度、用具室から出て・・姿を現して、ドアをノックした。

「はーい」

中からは、すみれちゃんの声がした。

「入るわね〜」

そう言って、改めて中に入った。
すると神楽ちゃんが、

「準備ならいつでも良いですよ」

そう言って来たの。

「そう?、それじゃステージ脇のドアの中で待機してもらっていい?」

と訊くと、

「あんなところで?・・どうするんですか?」

と訊き返してきた。

「せっかくだから、入場からやろうと思うんだけど〜〜・・それと適当に曲流していい?」

すると、

「べつに構わないですが・・・・」

そう言ってきた。
そのとき、すみれちゃんは私を睨むようにみつめていた。

「それじゃ、移動の方をお願いね・・・こっちの準備ができたら、コールするから」

そう言って、用具室を三人で出る。
神楽ちゃん達は、ドアへ向かい・・私は綾乃ちゃんが待機している第一用具室へ向かう。

そしてドアをノックして、

「綾乃ちゃん、私は放送席にいるから、準備できたらこっちに合図してね〜」

そう言って、私は放送席に向かう。

本当は中に入りたいんだけど〜〜・・・久しぶりに朔夜くんにお願いしようかしら?


3 青コーナー控え室



試合前のスパーということで、弥生ちゃんとぼくで綾乃ちゃんの相手をしていた。

弥生ちゃんの突き、ぼくの掌底をかわしていくけど・・・・・
これで神楽ちゃんのパンチに対抗できるのかは疑問だった・・・

「綾乃ちゃん、この辺にしておこうよ」

綾乃ちゃんも、

「そうね・・そうしよう」

と、ぼくたちはスパーを終了した。

「それじゃ、流花達は試合の用意してくるね・・・・弥生ちゃん行こう」

「うん」

そう言って、二人して用具室を出て行った。

?・・・・もしかして、試合前にぼく達を二人きりにさせるということかな?・・・

・・・・・・

「朔夜くん、ストレッチするから手伝って」

綾乃ちゃんが、座って足を開きながら言って来た。

「え?・・あ・・うん、わかった」

ぼくは、綾乃ちゃんの後ろ側へ移動して、綾乃ちゃんの肩に手をかけた。
そして、ゆっくりと押していく。

ぼくは、綾乃ちゃんの肩を押しながら、

「ごめんね綾乃ちゃん・・・・ぼくのせいでこうなっちゃって・・・」

と、謝った。

すると、

「ううん・・・私が自ら試合を挑んだんだもん・・・朔夜くんを殴ろうとした事は許せないけど・・・」
「でもその時に、私が闘いたいって思ったの・・・」

「綾乃ちゃん・・・・」

でも・・その時の綾乃ちゃんは、緊張しているということが・・肩を押すぼくの手から伝わってきた。
それから、少しの間・・・ぼく達は無言でストレッチを続けた。

その後、

「そろそろ行こうか」

綾乃ちゃんがそう言い出した。

ぼくは、綾乃ちゃんの肩から手を離した。
綾乃ちゃんは立ち上がり、ジャージを脱いで入場コスの学校の制服を取り出す。

ぼくは立って無言でその様子を見ていた・・・・そしたら、

「え!?」

ぼくは、一瞬呆然とした・・
綾乃ちゃんが、スク水のままぼくに抱きついてきたんだ・・・・

「あ・・綾乃ちゃん?・・・」

「・・・・・・・・」

「綾乃ちゃん・・・どうしたの?」

「・・・・・・・・・・」

なんか・・・綾乃ちゃん・・・震えているみたい・・・・・

「・・・・・・・」

「朔夜くん・・・」

「ん?」

「キスして」

「ええ!?」

ぼくは、驚いた。

こんな時に何を言い出すんだ?

「綾乃ちゃん・・・・」

「私の必勝祈願に・・・・・いいでしょ?・・・それくらい」

綾乃ちゃんは、そう言ってきた。

「う・・・うん・・・わかった」

そう応えたんだ・・・

かつて、弥生ちゃんから同じようにキスされたことが何度もあったっけ・・・・
それに・・ぼくのファーストキスの相手は綾乃ちゃんだったな・・・たしか小学生の時に・・・

「・・・・」

綾乃ちゃんが、目を閉じた。
ぼくは、綾乃ちゃんの唇にそっと自分の唇を重ねた。


3 異種格闘技 山本神楽 vs 成瀬綾乃



「OKだそうですー!」

弥生ちゃんが、私が待機している放送席に向かって叫んだ。

神楽ちゃんたちは、いつでもOKだし・・・・それじゃ、行こうかしら?

・・・それにしても、綾乃ちゃんたち・・・長くアップしてたのね・・・・
・・まったく・・・中でなにしていたのかしら?

「さてと・・・それじゃ・・・いきますか」

わたしは、CDをセットしてマイクのスイッチを入れる。

そして、コール!

「赤コーナーより、山本神楽選手の入場です!!」

そして、CDをリピート!!
曲が流れると、

ガチャ

下からドアの開く音がした。
神楽ちゃんが入場していくのね。

さ〜て・・それじゃあ〜アレといきますか。

『かけがえのない親友のため、未知なる相手との闘いに望むべく、
 山本神楽がリングへと一歩一歩進んでいきます・・その表情は、まさに野生の狼!!』

神楽ちゃんが、すみれちゃんをつれてリングへと向かっていく。

『そして今・・・山本神楽、闘いの場へ・・剛拳をもって降臨ーーー!!』

神楽ちゃんがリングイン!!

流花ちゃんと弥生ちゃんが、拍手で迎える。
これで、神楽ちゃんはOK!

私はCDを止める。

次は、いよいよ綾乃ちゃんの登場ね。
私はCDを入れ替えて、マイクを手に取る。

「それでは、青コーナーより・・・成瀬綾乃選手の入場です!」

私はさっきと同様に、CDをリプレイして曲を流す。
用具室が開いて、制服姿の綾乃ちゃんとセコンドの朔夜くんが出てきた。

さてと・・・・

『我に挑むものは全てを倒さん!と、成瀬綾乃がリングへと向かいます。
 強者と闘う喜び、そして幼馴染を守るため・・・その眼には炎が宿っています!!』

二人がリングへと到着すると、朔夜くんがロープを開いた。

『成瀬綾乃!堂々とリングインーーー!!』

そこでまた、流花ちゃんと弥生ちゃんの完成と拍手が沸きあがる。
綾乃ちゃんが、それに手を挙げて応える。

そこでCDを止めて、私もリングへ向かう。

これで、役者はそろったわね〜〜

私はリングに到着すると、

「それでは本日のメインイベントを行います!」

マイクに叫んだの。

「わーーーーー!!」
「わーーーーー!!」

流花ちゃんと弥生ちゃんが歓声と拍手。
すみれちゃんと、朔夜くんも拍手はしていた。

神楽ちゃんと綾乃ちゃんは、睨み合ってたけど〜

「赤コーナー・・ボクシング代表〜山本〜〜神楽〜〜!!!」

私がコールすると、みんなから歓声と拍手。

そして神楽ちゃんは、グローブをバシバシと打ち鳴らす。

お次はっと・・・

「青コーナー・・プロレス代表〜成瀬〜〜綾乃〜〜!!」

綾乃ちゃんが、笑顔で片手を上げる。
すると、さっきよりも大きく歓声と拍手!

まあ〜私達のテリトリーだから仕方ないけど〜

「それじゃ、ルールの説明するわね」

私は、考えておいたルールを説明する。
といっても、ありがちな・・目への攻撃・髪を掴むのは禁止・グローブなしのパンチ禁止・肘禁止。
そして、決着はギブアップかKOのみ
時間は5分1ラウンドで、10ラウンドまで。

こんなものかしらね。

ルールを説明し終えると、神楽ちゃんと綾乃ちゃんは各コーナーへと戻っていく。

そして、綾乃ちゃんは制服を脱いで水着になる。
同時に、二人ともマウスピースを口に入れた。

綾乃ちゃんのは、朔夜くんが用意したみたいだけど・・・・
それって・・もしかして、朔夜くんが普段道場で使っているやつかしら?
だとすると・・・・・・・キャッ

「綾乃ちゃ―ん、がんばれー!!」

「負けないで下さいね!」

流花ちゃんと、弥生ちゃんが声援を送る。
それに対し、綾乃ちゃんは笑顔で応える。

思った以上に、冷静なのね。
これなら大丈夫かもね。

神楽ちゃんは、マットの感触を確かめているの。

ちなみに、このマットは私が細工してあるから、神楽ちゃんに不利にならないようにフットワークをとれるような硬さになってるの。
もっとも、投げなどを喰らった場合は普段の硬さになるから心配はないわよ。

「さて・・・二人とも準備はいい?」

私が訊くと、二人とも無言で頷く。

「それじゃ、セコンドは外に出てね」

すると、すみれちゃんとさくやくんはリングの外に出る。

朔夜くんは、綾乃ちゃんにアドバイスしていたけど・・・
すみれちゃんは、神楽ちゃんに怪我させないでねと、あくまでこの試合は乗り気じゃないみたいね。

でも、もう止められないわよ〜〜

さーーて・・・それじゃ、行きましょうか・・・フフフ

「いいわね・・・いくわよ・・・・・」

二人は、さらに火花を散らしてる。

「ファイッ!!」

私は掛け声と共に、腕を交差させた。


4 Round.1 拳vs関節技



試合が始まると、二人ともリングを回りながら徐々に間合いを詰めてきたの。

神楽ちゃんは、軽くフットワークをとりながら。
綾乃ちゃんは、摺り足っぽい足さばきで近づいていく。

そして、間合いが詰まったところで・・いきなり綾乃ちゃんがローキックを飛ばしていった!
弥生ちゃんから教わったっていう、空手式の下段廻し蹴り!

それが、ビシッて決まった!

「キャッ!」

神楽ちゃんが悲鳴を挙げる。
さすがに、蹴り技には慣れていないわね。

そして、綾乃ちゃんがローキックを次々と飛ばしていく!

「キャッ・・いた・・・いた・・・」

神楽ちゃんも、ガードしようとしているけど・・・全然できてない。
もしかして、ローキックだけでおわりかしら?

「ほら!効くでしょ、ローキック・・・降参する?」

綾乃ちゃんは、連打しながらそう言う。

しかし、

「ふざけん・・な!」

神楽ちゃんが、苦し紛れに大ぶりのパンチを放った!
それが、綾乃ちゃんの顔をちょっと削るようにヒットしちゃった。

「キャッ!?」

綾乃ちゃんが、衝撃でグラリとよろける。

「綾乃ちゃん!!」
「綾乃ちゃん!!」
「綾乃さん!!」

朔夜くんたちが、動じに叫んだ。
私も、おもわず叫びそうになっちゃった。

「オラ!!」

ここぞとばかりに、神楽ちゃんが綾乃ちゃんにパンチを連打し始めたの!

「く・・」

綾乃ちゃんは、両腕で顔面をガードするんだけど・・・・

「キャア・・・くぅう・・・」

ガードしていても、効いてるみたい。

そのうち、

「シュッ!」

ボゴ

綾乃ちゃんの脇腹に、フックが入っちゃった!

「アグゥ・・・」

綾乃ちゃんのかおが、苦しい表情になる。

そこへ・・・・



ボゴォォォ

綾乃ちゃんに、強烈なボディーブローが突き刺さった!!

「あ・・・ウゥゥ・・・・」

綾乃ちゃんの目が、大きく見開かれ・・・・・くぐもった悲鳴を残して・・・・・

バタ

ダウンした。

「綾乃ちゃーーーん!!!」
「綾乃ちゃーーーん!!!」
「綾乃さーーーん!!!」

朔夜くん達、三人が叫んだ。


綾乃ちゃんは、お腹を押さえて倒れたままダウン・・・・

私も、突然のことに・・・呆然としちゃった・・・

「カウント」

神楽ちゃんが、コーナーに戻りながらぶっきらぼうに言い放った。

まるで、ハイ終わりって感じに・・・・・
・・・とにかく、カウントをとらなきゃ・・・・・

「ワン・・・・ツー・・・・スリー・・・・」

「綾乃さーん、立ってください!!」

「綾乃ちゃーん、がんばってー・・おねがーい!!」

「立つんだ、綾乃ちゃん!」

三人が、次々と叫ぶ。
そのせいか、綾乃ちゃんは、

「ぅぅぅ・・・くく・・・・」

モソモソと蠢きながら、起き上がろうとしてきた。

「シックス・・・・セブン・・・・」

私が7までカウントしたとき・・・

「くっ・・・」

綾乃ちゃんが、歯を食いしばって起き上がった。
そして、ファイティングポーズをとったの。

そのとき、朔夜くんたちから安堵のため息が漏れた。

「へ〜・・起き上がれたんだ・・」

神楽ちゃんが、ちょっと驚いたように言いながらコーナーから綾乃ちゃんへと歩み寄る。

「当たり前でしょ」

綾乃ちゃんは、微笑を浮かべて応える。

無理しているのかどうかはわからないけど・・・・とりあえず、試合続行はできるわね。

「ファイッ!」

私は、腕を交差させて合図する。
途端、神楽ちゃんが間合いを詰めてジャブの連打!

「うっ・・」

綾乃ちゃんは、両腕で顔面をガードしつつ・・体を曲げる。
そして、ガードの上から神楽ちゃんのパンチが叩き込まれていく。

「綾乃ちゃん、回り込むんだ!」

朔夜くんが叫ぶけど・・・

「くっ・・・うう・・・」

ひたすらガードするしか出来ないみたい・・・・
さっきのボディーブローが効いてるのね・・・・ただラッシュを堪えるしかできないみたい・・・・

「ほらほらー!どうしたー!!」

神楽ちゃんは、パンチの連打を叩き込みながら挑発する。

「くううう・・・・」

「綾乃ちゃ―ん!!」

「綾乃さーん!!」

二人が叫んだ後、

ボグッ

脇腹に、神楽ちゃんのフックが入った!

「アウゥッツ・・!!」

悲鳴と共に、綾乃ちゃんのガードが崩れちゃった!

まずいわよ、これ!
さっきと同じことの繰り返しになっちゃう・・・・

「シュッ!」

神楽ちゃんの左フックが、綾乃ちゃんの顔面へ・・・・

スカッ

え?・・・空振り?

「なっ!?」

私も神楽ちゃんも・・・ううん、みんな驚いた表情になった。
だって、当たったと思ったのに・・・綾乃ちゃんはダッキングでかわしたんだから・・・

しかも、そのまま神楽ちゃんに組み付いた!

「こぉのぉーー!!」

組み付くなり綾乃ちゃんは、神楽ちゃんを裏投げでマットへ叩きつけた!!

「アアアーー!!」

悲鳴を挙げる神楽ちゃん。

綾乃ちゃんは、それだけで済ませずに・・神楽ちゃんの足を掴んで、脇にはさみこんだ!
そう、アキレス腱固め!

「アアーー・・クアアアーーー!!」

多分、初めて経験する関節技の痛みに、大きな悲鳴を挙げる神楽ちゃん。

「神楽ちゃんっ!」

すみれちゃんが、叫ぶ。
だけど、神楽ちゃんは、

「くあああーーー・・・・アアーー・・・アアアーーー」

ジタバタもがいているだけで、外せない。

そりゃそうよね〜・・ボクシングのジムでは、関節なんか教わらないんだから・・・・

「ギブアップ?」

ギブを訊く私に、神楽ちゃんは、

「ノ・・・ノーーー・・」

ジタバタしながら、叫んでいる。

これは、決まったかしら?

その時・・・・

「・・・・・・フン」

綾乃ちゃんは、アキレス腱固めを外しちゃった!

「ええーー!?」

「綾乃ちゃん!?」

「な・・なぜですか!?」

流花ちゃん・朔夜くん・弥生ちゃんが驚いて綾乃ちゃんに言う。

綾乃ちゃんは、立ち上がりながら、

「だって、これで終わらせちゃったら、つまんないもん」

そう言って、コーナーへと戻る。

神楽ちゃんは、足が痛いらしく・・まだ座ったまま。

「大丈夫?・・まだ闘える?」

と、訊いてみる。

「もちろんです、まだ闘えます!」

そう言って、強引に立ち上がった。
でも、さっきのアキレス腱固めで痛めている事は確かよね・・・

「それじゃ、試合を続行するわよ・・・」

そう言って、同じくリングの中央で、

「ファイッ!!」

腕を交差しながら、試合続行の合図をした。

神楽ちゃんは、フットワークをとらずにジットしていた。
多分、さっきのアキレス腱固めが効いたのね。

神楽ちゃんの表情も、僅かに引き攣っているみたい。

「・・・」

綾乃ちゃんが、近づいた。

すると、

「シュッ」

神楽ちゃんは、ジャブでけん制する。

それによって、綾乃ちゃんの動きが止まる。
そして、再び綾乃ちゃんが間合いを詰め・・神楽ちゃんがジャブでけん制する。

それを二回ほど繰り替えすと、今度は綾乃ちゃんはローキックを放った!

神楽ちゃんは、あわてて下がろうとするけど・・・できずに喰らってしまう。

「クッ・・・」

だけど、その後すぐにジャブを放った。
それが綾乃ちゃんに、ビシッと当たるけど・・・それほど効いてはいないみたい。

綾乃ちゃんは、気にせずにローキックを放つ!
同じくかわしきれずに、喰らってしまう神楽ちゃん。

「アウッ!」

グラッときた神楽ちゃんに、綾乃ちゃんが組み付いた!

「このーー!!」

すかさず、綾乃ちゃんは裏投げで神楽ちゃんをマットに叩きつけた!!

「キャアアーー!!」

やっぱり、組み付かれたら神楽ちゃんは不利よね。
綾乃ちゃんは、神楽ちゃんの腕を取ろうとするんだけど・・・

「放せ!」

綾乃ちゃんの顔面に、パンチを放ったの!!

「ブッ・・・」

顔面にまともに食らった綾乃ちゃんは、顔面を押さえてマットを転げまわった。
その隙に、神楽ちゃんは離れて立ち上がる。

私は、カウントをとろうと近づくけど・・・・

「うくく・・・・」

その前に、綾乃ちゃんは起き上がった。

幸い、鼻血などは出てないみたい。
そして、綾乃ちゃんは構えなおすけど・・・・

ピピピピピピピピ

流花ちゃんがセットしておいた、アラームが鳴り響いた。

3分立ったようね。


5 Round.2 炸裂!バックドロップ!!



二人は、即座にそれぞれのコーナーへと戻る。
ちなみにこれがゴングの代わり。

「綾乃ちゃん、大丈夫?」

流花ちゃんが、濡れタオルで綾乃ちゃんの顔を拭く。

「う・・うん・・・なんとかね」

そういいながらも、けっこう辛そうね・・・2ラウンドもつかしら?・・・

「綾乃ちゃん」

朔夜くんがミネラルウオーターのペットボトルを渡す。

綾乃ちゃんはそれを受け取ると、口の中を濯ぐ。
そして、バケツの中に吐き出す。

そして、弥生ちゃんが小声でなにか綾乃ちゃんにアドバイスしているみたい。

一方、神楽ちゃんの方でも同じようにすみれちゃんが、顔を拭いているわね。

「ねえ・・もうやめとこうよ・・・」

すみれちゃんは、まだ止めさせようと考えてる。

でも、絶対に止めさせないわよ。

私、レフリーとして冷静な立場にいるけど・・実際はこの熱い闘いに興奮しているんだから。

「いや・・・この闘い・・・途中じゃ終わらないよ・・・相手もそう思っているよ」

神楽ちゃんは、楽しそうに微笑みながら言う。
この娘も、闘うことが好きみたいね。

それでこそ、私が見込んだファイターだわ。

一分間のインターバルが終わり、セコンドアウトになる。
そして、両者とも中央へ来る。

「ファイッ!!」

私の合図で、第二ラウンドが始まった。

「このっ!」

綾乃ちゃんが、中段廻し蹴りを放った!
でも、神楽ちゃんにバックステップでかわされる。

そして、すかさず神楽ちゃんがパンチの連打を浴びせてきた!

「くっ!・・・」

綾乃ちゃんは、予測していたらしく・・・両腕で顔をガードする。
そこでまた、ボグッと綾乃ちゃんの脇腹に神楽ちゃんのフックが決まるんだけど・・・・

「このっ!!」

その後すぐに、綾乃ちゃんがラリアートを繰り出したの!!

「えっ!?」

神楽ちゃんは、いきなりのことで左腕だけでガードしようとするんだけど、さすがに片腕だけでガードできない。

「きゃあっ!!」

そのまま倒されちゃった。
綾乃ちゃんも、けっこうパワーあるわね。

私ほどではないけど。

「ほらほらーー!」

綾乃ちゃんは、神楽ちゃんにストンピングで蹴りまくる。

「くっ・・・くっ・・・」

神楽ちゃんは、体を丸めて耐える。
そして、蹴るのをやめると・・神楽ちゃんの腕を掴んだ。

私は、そこでなにかサブミッションに移るんだろうと思ったんだけど・・・

「立ちなさいよ!」

神楽ちゃんを引き起こした。
そして、神楽ちゃんが反撃するより早く、綾乃ちゃんのラリアートが神楽ちゃんの喉に食い込んだ!

「アウッ!!」

神楽ちゃん、ダウン。

「綾乃ちゃん、下がって」

私は、カウントをとる。

「ワン・・・・ツー・・・・スリー・・・・フォー・・・・」

「うっ・・・ゴホッゴホッ・・・」

神楽ちゃんは、むせながら起き上がってきた。
そして、すぐに構えなおした。

ちなみに、その表情は怒っている。

綾乃ちゃんに、ダウンさせられたのが頭にきたみたいね。

「やりやがったなーーー!!」

神楽ちゃんが仕掛けていく。

ジャブの連打!

綾乃ちゃんは、目がなれてきたのか、そのパンチを手で弾く。
だけど、弾ききれずにすぐに両腕でガードする。

「シュッ!」

神楽ちゃんのストレートが、ガードの上から綾乃ちゃんに炸裂した!

「うぐっ!!」

グラッときた綾乃ちゃんに、神楽ちゃんのフック!
これもガードの上から、当たったんだけど・・・これによって綾乃ちゃんのガードが崩れた!!

そこへ神楽ちゃんの右フックが飛んでくる。

「綾乃ちゃん、タックルだ!」

朔夜くんが叫んだ。

その瞬間、綾乃ちゃんはフックを掻い潜って、神楽ちゃんの腰に組み付いた。

「うわっ!?」

綾乃ちゃんはそのまま、足を取って神楽ちゃんを倒す。
そして、そのままヒールホールドに移る!

「アアアアアアアーーーーーー!!」

神楽ちゃんの悲鳴が、体育館に響く。

「ギブアップ?」

「ノーッ・・・・アアアアーーー!!」

「神楽ちゃん、ロープまで逃げてっ!!」

すみれちゃんが、神楽ちゃんに叫んでいる。

「ぐうううううーーーーー!!」

痛みのため、叫びながらも神楽ちゃんはロープへジリジリと近づく。

「そうはさせないわよっ!!」

ギリギリのところで綾乃ちゃんは、踏ん張る。

「ギャアアアアアーーーーー!!」

神楽ちゃんは、さらに悲鳴を挙げる。

「ギブアップ?」

私はもう一回訊く・・・・・でも、

「ノォォォーーーー」

それを拒否する。

「うわーーーー!!!」

一際大きな声で叫ぶと、ロープを掴んだ。

「ああ〜〜・・」
「ああ〜〜・・」
「ああ〜〜・・」

朔夜くんたちが、残念そうな声を挙げた。

「はい、ブレイク!」

私がそう言うと、綾乃ちゃんは残念そうに神楽ちゃんの足を放す。
そして、ゆっくりと立ち上がる。

神楽ちゃんは、まだ倒れたまま。

もしかして、痛めちゃったのかしら?

「大丈夫?・・できる?」

今度は、神楽ちゃんに近づいて訊く。

「だ・・・大丈夫です・・・まだやれます」

そういいながら、立ち上がる。

でも、足が痛そう・・・ちょっと足を引きずっているし・・・

「それじゃ、中央に・・」

私は、二人がリングの中央に来るのを待って、

「ファイッ!!」

試合を続行した。

「まだやる気?」

「当然!」

その時、神楽ちゃんが足が痛いのを我慢して、綾乃ちゃんに向かって行った。
今度は、ジャブで攻めていくんじゃなくて、ラッシュでたたみこんできた!

「キャッ!!」

綾乃ちゃんは、必死に両腕でガードそして、体をくの字に曲げて堪えようとする。
そんな綾乃ちゃんに、パンチが次々にヒット!

ガードしている部分だけじゃなくて、それ以外の部分にもヒットしていく。

「綾乃さん、離れてーー!!」

弥生ちゃんが叫ぶ。
でも、綾乃ちゃんは逃げられない。

「うう・・くう〜・・・」

それでもなんとか、後ろへと下がるんだけど・・・・

「オラオラオラ・・・さっきまでの威勢はどうしたーー!!」

神楽ちゃんは同じように追いかけながら、さらに殴りまくる。
そしてついに、ロープまで追い詰められちゃった・・・・・

「・・・・・・」

もはや綾乃ちゃんは、なすすべなく殴られてる・・・・

これじゃ、サンドバッグだわ・・・・・

ガッ

綾乃ちゃんのうでの上から、ショートフックが炸裂!
同時に、不意にラッシュを止める・・・・

そして・・・・綾乃ちゃんが前のめりに倒れていく・・・・

「綾乃ちゃんっ!!」
「綾乃ちゃんっ!!」
「綾乃さんっ!!」

朔夜くんたちが、叫ぶ。

そのとき、

「まだ眠るには早いよ」

神楽ちゃんが綾乃ちゃんを抱き止めた。
でも、それだけに終わらず・・・後ろに回りこんで綾乃ちゃんを抱え上げた。

え!?・・あ・・・あれは・・・


「うそーー!?」

流花ちゃんが叫んだ。

その時・・・神楽ちゃんは体の向きを変え、綾乃ちゃんを抱えて後ろへと落とした!!

バックドロップ!!・・・・・・しかも、けっこうな高角度!

「ガフッ・・・」

綾乃ちゃんの鈍い悲鳴が、聞こえた。
マットに叩きつけられた綾乃ちゃんは、完全にダウン。

神楽ちゃんが・・・・プロレス技を使うなんて・・・・

「どうだい、あたしのバックドロップは?」

神楽ちゃんはニヤリと笑う。

でも、綾乃ちゃんはダウンしたまま動かない・・・・・
神楽ちゃんはそんな綾乃ちゃんに馬乗りになる。

マウントポジション

そして、こぶしを振りあげる。

馬乗りパンチをしようとするつもりなんだわ・・・・

「きゃぁーー!!」
「綾乃ちゃん、逃げろ!!」

朔夜くんが叫ぶ。
弥生ちゃんは両手で顔を覆っている。

でも、綾乃ちゃんは動けない。

そして、神楽ちゃんが拳を振る降ろそうとした途端・・・

ピピピピピピピピ

タイマーが鳴った。


6 Round.3 夜叉姫



「はい、それまで!」

私は、二人の間に割ってはいる。

「ちっ・・・・」

神楽ちゃんは、だらんと腕を下げて綾乃ちゃんの上から起き上がった。
そして、悔しそうな表情でコーナーへと戻っていく。

綾乃ちゃんの方は、ダウンしたまま起き上がらない。

「綾乃ちゃん、大丈夫!?」

私は、綾乃ちゃんを抱き起こす。

「ハアハアハアハアハア・・・・・だ・・・ハアハア・・いじょう・・ハア・・・ぶ・・・です」

息をきらせながら応える。
かなり辛い感じだった。

「起き上がれる?」

「起き・・・ハアハア・・れ・・・ハアハアハア・・・・ます・・・・」

綾乃ちゃんは、必死に起き上がろうとするけど・・・・・

「あ・・・・」

ガクンと膝をついた・・・

「綾乃ちゃん」
「綾乃ちゃん」
「綾乃さん」

私の他に、朔夜くんたちもリングに入ってきて、綾乃ちゃんを抱き起こした。

「綾乃ちゃんはよく闘ったよ・・・でも、もうこれ以上は・・・」

朔夜くんがそう言うと、

「イヤ」

綾乃ちゃんは、リタイアするのを拒否した。

「お兄さん、とりあえず綾乃さんをコーナーへ・・」

「う・・うん・・」

朔夜くんは、三人で綾乃ちゃんをコーナーへと連れていき、イスに座らせる。

「・・・・・・・・」

綾乃ちゃんは、イスに座ると・・力が抜けたように俯いている。

大丈夫かしら?・・・まあ、なんかあっても私の力でなんとかなるにしても・・・・・
止めた方がいいかしら?

「私・・・まだ・・やるから・・」

私の考えを察知したのか、綾乃ちゃんはそう呟く。

髪をダラーんと下げているその姿は、私以上に幽霊みたいで・・・・
本物の私から見ても、すごく不気味・・・・・

「まったく・・・しぶといな・・・あいつ・・・」

「神楽ちゃん・・・やっぱり・・・」

「いや・・・今度こそ終わらせて見せるよ・・・まだ、あたしの得意技見せてないんだから」

「さっきのバックドロップは?」

「・・・あれは、気まぐれだって・・・」

「綾乃ちゃん・・・」

「朔夜くん・・・・絶対にタオルを投げ込んだりなんかしないでね・・・・・」

「でも・・・」

「もし、そんなことしたら・・・・絶対に朔夜くんを許さないから・・・」

「・・・・・・・」

さて・・・そろそろね。

「はーい、セコンドアウトー」

すみれちゃんと朔夜くん達が、リングの外へ出る。

神楽ちゃんがイスから立ち上がり、綾乃ちゃんも俯いたままフラフラと立ち上がる。

綾乃ちゃん・・・このラウンドもつかしら?
もし・・・やばくなってきたら、本当に止めよう・・・・

「・・・・・許さない・・・」

え?・・・

綾乃ちゃんが、なんか呟いたんだけど・・・・あまり、よく聞こえなかった。

でも、綾乃ちゃんの背後にいる朔夜くん達が・・なんか青ざめた表情になっているのが気になるわね。

「それじゃ、3ラウンド・・・ファイッ!」

私は腕を交差させて、試合を開始させる。

その時、神楽ちゃんは構えているのに、綾乃ちゃんは腕をダラーンと下げていて、構えようとしない。
俯いて、髪で顔が隠れているのも気にしていない。

どういうこと?

闘う気力が無いの?・・・・それかもしかして、ノーガード戦法?

「綾乃ちゃん?」

私は綾乃ちゃんに声をかけるけど・・・・

「・・・・・・」

反応はない。

「どうやら、もう闘う気力もないみたいだね・・・・だったら・・これで終わらせてやるよっ!!」

「あ・・待って!」

私が言った時には、神楽ちゃんは綾乃ちゃんにむかってストレートを放っていったところだった。

その瞬間、

     パシィィィンッ

「アウゥッ!!」

平手打ちの音と、綾乃ちゃんじゃなくて神楽ちゃんの悲鳴が響いた!!
そして、神楽ちゃんがクラッとよろけた。

神楽ちゃんは、信じられないという表情で綾乃ちゃんを見る。

ううん、このとき私も・・他のみんなもおなじ表情だった。

私・・てっきり綾乃ちゃんに神楽ちゃんのストレートがヒットしたと思っていたのに・・・・
綾乃ちゃんは、紙一重でそのストレートをかわして神楽ちゃんに平手打ちをしたの!

「あんた・・・まだそんな力が・・・」

神楽ちゃんがそう言うと、俯いたままだった綾乃ちゃんが顔を挙げる。


そこには・・・・

「どうしたのよ・・・さっさとかかってきなさいよ」

真っ赤な顔で、もの凄い形相の綾乃ちゃんがいた。





「綾乃ちゃん・・・キレてる・・・・・」

流花ちゃんが呟いた。

「ああなったら、綾乃さんを倒すか倒されないと止まらないです・・・・」

あ・・そういえば、以前朔夜くんから聞いたことある。

綾乃ちゃんは、追い込まれるとキレて鬼みたくなるって・・・・

そして朔夜くんは、こう呼んでいたっけ・・・・・

「ついに綾乃ちゃんが、『夜叉姫』となっちゃった・・・」

そう、いま朔夜くんが呟いたとおり、
朔夜くんはキレた綾乃ちゃんを夜叉姫と呼んでいたの。

「夜叉姫?・・いいわね、気に入ったわ」

綾乃ちゃんは、冷たい笑いをしながら神楽ちゃんをみている。
そして、神楽ちゃんへと歩き出す。

「この・・・・一発入れたぐらいで、いい気になってるんじゃねーー!!」

神楽ちゃんが、綾乃ちゃんにパンチを放っていくんだけど・・・・・

ドゴッ

「うぐぅ〜・・」

綾乃ちゃんの前蹴りが、神楽ちゃんのお腹にカウンターで炸裂!
神楽ちゃんはお腹を押さえて、その場にがっくりと膝をついた。

ダウン!

しかし、

「ダウンなんかさせないわよ!」

綾乃ちゃんは、神楽ちゃんの首に腕を巻きつけて強引に起き上がらせる。

「あぅ・・・あ・・」

神楽ちゃんを起き上がらせると、腕を巻きつけたまま後ろへ!

DDT!!

「がっ・・・」

マットに頭部を叩きつけられ・・・神楽ちゃん、完全にダウン!

そして、綾乃ちゃんは倒れた神楽ちゃんを蹴りまくる!

「ほらほらーー!どうしたーー!!」

叫びながら踏みつけたり、蹴飛ばしたり。

「ぐぅ・・あぅ・・・」

神楽ちゃんは、前蹴りのダメージが大きいらしく、ろくにガードも出来ないまま蹴られていた。

「まだ、終わんないわよ!」

綾乃ちゃんは、神楽ちゃんの腕を取って起き上がらせる。

「ハアハアハアハア・・・・」

神楽ちゃんは、フラフラと起き上がる。

でも、

「くっ・・・なめんなぁーー!!」

綾乃ちゃんへ左右のボディーを連発!!

「うぐっ!?」

綾乃ちゃんの動きが止まって、目が大きく開かれる。
そこへ、軽い左右のフック!!

まともに、ヒット!

綾乃ちゃんの顔が揺れる。

「綾乃ちゃん!」

朔夜くんが叫ぶ。

それと同時に、神楽ちゃんの右拳が下から綾乃ちゃんに迫り来る!!

アッパーカット!!

ドゴォォォッ!!

綾乃ちゃんの顎に、見事に炸裂!!

「っ・・・・・・・」

綾乃ちゃんが、後ろへと大きく吹っ飛んでダウン!!

「綾乃ちゃ――ん!!!」
「綾乃ちゃ――ん!!!」
「綾乃さ――ん!!!」

朔夜くん達が叫んだ。

「綾乃ちゃん!?」

私は、ダウンした綾乃ちゃんに近寄る。
そして、綾乃ちゃんの顔を覗き込む。

瞼が閉じられてグッタリしている・・・・・・
綾乃ちゃんは、完全に失神していた。

私は立って、レフリーストップをしようとする・・・・が、

「まだ、終わんないわよーーー!!」

綾乃ちゃんが、叫びながら起き上がった。

「そんな、あたしのアッパー喰らって起き上がれるなんて・・・・」

神楽ちゃんが、呆然と呟く。
神楽ちゃんだけでなく、私も・・みんなも呆然として綾乃ちゃんを見ていた。

「今の私には、そんなの効かないわよ・・・もっと早く打っておくんだったね」

そう、言い返した。

もしかして、キレた綾乃ちゃんは打たれ強さ等もアップするのかしら?・・・
恐るべきは、綾乃ちゃんね・・・・・

「そ・・それじゃ、続行・・・ね」

私は、試合を続行させることにした。

その瞬間、綾乃ちゃんは間合いを詰めて左のミドルキックを神楽ちゃんへ放った!

「くっ・・・」

神楽ちゃんは、それを両腕でガードするけど、その威力に顔をしかめる。
でも、ガードされた綾乃ちゃんは、それで終わらせなかった。

何を考えたのか、そのまま斜め前へ倒れ・・・あ・・・違う!・・あれは・・

「くらえーーー」

綾乃ちゃんは、転がって足を上から浴びせるように叩きつける!!
そう、朔夜くん得意の浴びせ蹴り!!

これには神楽ちゃんも、対応できずにまともに喰らってしまう!
朔夜くんほどじゃないけど、これはかなり効くわよ。

「アアアアアアアーーーーーーー!!!」

今度は神楽ちゃんが、派出にダウン!

そこへ、綾乃ちゃんが追い討ちをかけようと迫る。
神楽ちゃんは、そうはさせまいとして、力を振り絞って転がって逃げようとする。

でも、うつ伏せになったところで綾乃ちゃんに掴まっちゃった・・・・

そして、綾乃ちゃんは関節をかけようとするのかと思ったけど・・・・違うみたい・・・
胴体に腕を回して・・・・持ち上げようとしている。

「こぉぉのぉぉーーーー!!!」

「うわあっ!?」

綾乃ちゃんが、神楽ちゃんを持ち上げた!!
そして、二回ぐらい振り回して、マットに叩きつけた!!

「うわあああああああああああああああああああーーーーーー」

断末魔の悲鳴を挙げた、神楽ちゃん。
この技によって、神楽ちゃん完全にダウン。

・・こ・・・これが噂のアヤチャンリフト!?

綾乃ちゃんが、ダウンしている神楽ちゃんの両足を取った。

「神楽ちゃん・・・バックドロップのお礼に、この関節技で終わらせてあげる・・」

冷たい微笑を浮かべながら、綾乃ちゃんがダウンしている神楽ちゃんを強引に引き起こす!!

「ぁ・・・」

神楽ちゃんはグッタリしていて、綾乃ちゃんにされるがままになっている。

そして綾乃ちゃんは、驚いた事に神楽ちゃんの体を両肩で担ぎ挙げた!
神楽ちゃんは、綾乃ちゃんの肩の上で仰向けに仰け反る!

これは・・・アルゼンチンバックブリーカーーーー!!

別名タワーブリッジ!!


「ギャアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーー!!」

またもや、神楽ちゃんの悲鳴!!
しかも、すごくきつそう・・・・・もがく事も出来ない・・・

綾乃ちゃんは俯いて乱れた髪で顔を隠し・・・口元には微笑を浮かべている。
そして、さらに神楽ちゃんの体を曲げていく。

「イヤアアアアアアーーーーーー放せーーーーーー!!!」

必死に抜け出そうとする神楽ちゃん、しかし・・・全然抜け出せない。

「神楽ちゃん!!」

すみれちゃんが、叫ぶ。

しかし、これは脱出不可能ね・・・

ミシ  ミシ

「アアアアアアアアアアーーーーーーーーーーー!!」

神楽ちゃんの腰か背骨がミシミシいってるわっ!!

綾乃ちゃん・・・神楽ちゃんを真っ二つにでもする気!?

こ・・これは止めないと!

「ぎゃああああああああああーーーーーーーーーーあああ・・・・・・ああ・・・・」

私が止める前に・・・・・神楽ちゃんの悲鳴が止まった・・・・・・
すると、綾乃ちゃんはニタ〜〜っと笑って、手を離し・・・・

ドサッ

神楽ちゃんが・・・マットに落ちた・・・・・・


×山本神楽
(13分48秒 3R KO)
(アルゼンチンバックブリーカー)
成瀬綾乃





7 激闘の末に



「試合終了ーーーー!!」

私は両手を振りながら叫んだ。

そしてそうしながらも、神楽ちゃんの傍へ駆け寄り・・・神楽ちゃんに触れる。
神楽ちゃんは、完全に失神していた。

普段鍛えているのだから、大丈夫かもしれないけど・・・・一応、私の力で回復させといた。

「神楽ちゃんっ!!」

「綾乃ちゃん!!」
「綾乃ちゃん!!」
「綾乃ちゃん!!」

双方のコーナーから、それぞれのセコンドが駆け寄った。

綾乃ちゃんは、不気味な笑みを浮かべたまま立ち尽くしていたけど・・・・・朔夜くんたちが駆け寄ると・・・・

「・・・・・」

朔夜くんの腕の中に、倒れこんだ。

「綾乃ちゃん・・・・」

「朔夜・・・くん・・・・・・私・・勝ったよ・・・」

「うん・・・見てたよ・・・すごい闘いだった」

「流花も見ていて、すごくドキドキした」

「お疲れ様です、綾乃さん」

と、朔夜くんたち。
でも、怖かったとはさすがにいえないみたいね。

「神楽ちゃん!!神楽ちゃん・・しっかりして!!」

「大丈夫よ、問題ないわ」

私は隣にいるすみれちゃんに、そう言ってあげる。

そして、

「・・う・・・ううん・・・」

神楽ちゃんが、タイミングよく目覚めた。

「神楽ちゃんっ!!」

すみれちゃんが、神楽ちゃんを抱き起こして、ギューっと抱きついた。

・・・すみれちゃん・・そんなに強く抱きついたら・・・

「ちょ・・・すみれ、痛い痛い」

ほら〜痛がってるじゃないの。

「すみれ・・・あたし・・・」

「うん・・・残念だったね・・・」

そこへ、朔夜くんの肩を借りた綾乃ちゃんが近寄って、

「神楽ちゃん・・・あなたのパンチ・・とっても効いたわよ」

綾乃ちゃんが、普通の笑顔でそう言ってきたの。
すると神楽ちゃんも、

「ああ・・・あんたの投げと関節も効いたよ」

笑顔で応えた。

「二人とも、いい闘いでした」

と、弥生ちゃん。

「それで・・相談なんだけど・・・」

「ん?」

「私達といっしょに、プロレスやってみない?」

綾乃ちゃんが、そういった。

「ええ?・・・あたしが?」

「うん、あの時のバックドロップもかなり効いたし・・それにまた神楽ちゃんとも試合してみたい」

と、綾乃ちゃん。

「ぼくも、アバラ直ったらキミと試合してみたいね」

「流花もー!」

「私も、神楽さんに挑戦したいです」

と、朔夜くんたち。

なんか・・私が工作した今回の原因・・・
朔夜くんに喧嘩売ってきたことが、忘れられている気がするんだけど・・・・・・
でも・・・そんなことは、どうでもいいか。

昨日の敵は、今日の友っていうしね。

「というわけで、神楽ちゃんとすみれちゃんも参加決定ね」

と、二人に言ってあげる。
とにかく、強引に仲間に引き入れちゃう事にした。

「ええ!?・・・あたしはOKですが・・すみれはプロレスなんて・・・」

「わ・・・私は・・・・神楽ちゃんのセコンドでなら・・・・・」

と二人。

「それでもいいわよ、とにかく参加してくれるんだから」

こうして、今回の異種格闘技は綾乃ちゃんの勝利で終わった。



今回の試合は、すごく楽しめたわね〜〜

異種格闘技戦だけでなく、私のハンディーキャップマッチも。
もう、最高って感じね。

ついでにメンバーも増えたし・・・もっともっと楽しめるわね。

そして、いろんな企画を考えて・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・フフフ

さーーて、次は何を企画しようかしら。



そうそう、今回の話はまだ続くわよ〜


つ・づ・く♪


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