第4話
作:薊(超芝村的制作委員会)



1 朔夜、負傷





「奈々子さーん、いますか?」

「ちょっと待ってね」

・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「お待たせ♪」

「・・・・・・」

「?・・・朔夜くん・・どうしたの?」

「・・・実はぼく・・・・肋骨にひびが入っちゃったんです・・・」

「ええ!?一体どうしたの!?・・・プロレスごっこで!?」

「いえ・・違うんです・・・骨法の道場で・・・」

「あ・・そうかー・・・それじゃあ、しばらくはプロレスできないわね・・・」

「はい・・・」

「サークルも、しばらくは中止?」

「いや・・・ぼくのタイトルを返上して、ぼく抜きでリーグ戦でしようかなと・・・」

「あの娘たちも、残念に思うでしょうね・・・・朔夜くんが試合できなくて・・・」

「はい・・・・」


2 予感



朔夜くんが、動けないとなると・・・

私と試合してくれる人もいなくなっちゃうのよね〜
私のことを知っているのは、朔夜くんだけだし・・・・

そうなると、前みたいに退屈な幽霊生活を送らなくちゃいけないの・・・それだけはイヤ!

でも・・・朔夜くんは試合できない・・・どうしようかしら・・・・・

・・・・・・・・何か面白そうなことでも起きないかしら・・・・

・・・・・・・
・・・・・・
・・・・

とにかく、もう朔夜くんたちの授業が終わるし、彼の後を着いていこうかしら。

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・

キーンコーンカーンコーンーー

あら、チャイムということは・・

約三十秒後に、教室から生徒たちが出てきた。

そして、私も朔夜くんの教室に入っていくんだけど・・
今は誰にも見えないようにしているから、朔夜くんだけじゃなく他の人にも見ることはできないの。
もっとも、霊感の強い人には別だけどね。

さ〜て朔夜くんはどこかしら〜・・・・

あ・・いたいた〜。

友達と席を囲って、なにか読んでいるのね。
マンガかしら?

・・・・・・・・
・・・・
・・

あら・・プロレスの雑誌。
余程プロレスが好きなのね・・・・

でも、朔夜くんは女の子たちとしか試合しないのよね〜
その点は、なんと言うべきなのかしら・・・・

あーあー・・・、朔夜くんとプロレスやりたいな〜・・・・

・・・・・・
・・・


あら?・・・

私が何気に、入り口を見ると・・・
廊下からこっそりと、朔夜くんを見ている女の子がいることに気付いたの。

朔夜くんって、かなり女の子にもてるの。

よく、お菓子やらお弁当とかもらっているし・・・・
告白されることも、しょっちゅうだもんね・・・
ま・・・それは別にいいんだけどね・・・・

とにかく・・暇だし、一緒に雑誌でも読んでいようかしら・・・・


そして、お昼休み・・・・今日も朔夜くんは、苦しそう・・・・

怪我しているところに三人前のお弁当を食べたんだから当然よね〜

いつもは、この後体育館の用具室で友達とプロレスやっている朔夜くんも、今日は・・・
今日もかしら?・・座って、見ているだけだったし・・・・・

お弁当くれた一人は・・・幼馴染の・・・綾乃ちゃんっていったかしら?
あの娘からのと、他の女の子二人から。
朔夜くんもいらないならことわればいいのに、いつも悪いからって無理してたべるんだから・・・

そういえば、もう一人渡そうとしていた女の子がいたっけ・・・・

ただ、朔夜くんが三つも持っていたのを見て、渡さなかったけど。
それが、私が見た女の子だったんだけど・・

私だったら、強引にでも渡しちゃうのにな〜


3 奈々子の微笑



その次の休み時間に、ちょっと気になってあの女の子の近くにいたの。
そしたら、もう一人女の子とこんな話をしていたの。

「すみれ・・結局渡せなかったの?」

「うん・・・」

ふ〜ん・・・この娘、すみれちゃんって言うのね。

「ねぇ・・そんなにアイツの事好きなの?」

「うん・・・」

「あたしは、やめといた方がいいとおもうよ・・・」

なんか、失礼ね・・この娘。

「なんかさ・・・ああいった奴って、どうも好かないのよね〜・・なんか優柔不断だし・・・やっぱりやめといた方が・・・」

「神楽ちゃん・・・・」

この娘は、神楽っていうのね・・
私の朔夜くんを悪く言うなんて・・・・後ろから、バックドロップでもかけてあげようかな〜

「あ・・・ごめん・・・」

「ううん・・・」

あーあ、すみれちゃん落ち込んじゃった〜
この神楽って娘・・本当に頭くるわね・・・

やっぱりちょっと、なにか・・・・・・・・・・あら?

この娘の手・・・・・
この手は・・・・なにか格闘技やっている手ね・・・空手かしら?・・・・

・・・・・・・・・そうだわ!

その後の授業中・・・

ちょっとだけ、神楽っていう娘に乗り移ってみたんだけど・・・
驚いたことに、この娘ボクシングやっているの。

しかも、けっこう強いみたい。

かつて、すみれちゃんがピンチのときに、この娘が助けてきたみたいだし。
そのとき、私におもしろいアイデアが浮かんだの。

それはね〜〜


4 一触即発!綾乃と神楽



放課後 屋上

「ぼくに何か用?」

私が乗り移った神楽ちゃんに、そう訊いてくる朔夜くん。

「たしかあなた・・隣のクラスの山本さんよね?・・・私たちこれから用事あるんだから、はやくしてもらえる?」

綾乃ちゃんが、少し機嫌悪そうに言ってくる。
どうやら、ジェラシー感じているのね・・クス

とにかく、さっさと話を進めないとね〜

「あんたさ・・・すみれにまで手出したでしょ」

私は、朔夜くんに言う。
もちろん、演技よ。

「え?」

「あんたがモテるってのは知ってるけどさ・・・・すみれまで毒牙にかけないでくれる」

「ちょっと、何わけのわかんないこと言ってるのよ!」

綾乃ちゃんが、怒って言ってきたの。

その調子よ、綾乃ちゃん。

「昼休みの終わる頃、すみれの手を握っていたじゃない」

実は、終わる頃にすみれちゃんに強引に取り付いて、神楽ちゃんとすぐにわかれてわざと朔夜くんにぶつかって転んだの。

そしたら、案の定・・

「大丈夫?」

って、手を差し伸べてくれて・・・

「あ・・・あれは、ぼくがぶつかってしまって・・そして・・・」

「ねぇ、それって単なる言い掛かりじゃないの!」

綾乃ちゃんが、朔夜くんのセリフを遮って言う。

でも、まったくもってそのとおりなのよね〜
そして、私はそれを無視して・・・

「男のくせして、いいわけする気!」

不意に、朔夜くんに向かってジャブを繰り出したの!

そしたら、

「わっ!?」

って、驚きながらも・・しっかりと紙一重でかわされた。
さすがは朔夜くんね、怪我してもけっこう動けるじゃない。

そして、私は後ろへステップしてさがる。

「あたしのジャブをかわすなんて・・・あんた・・・ただの色男じゃなさそうだね」

そういいながら、ボクシングのスタイルに構える。

ちなみに、朔夜くんが骨法をやっていることを知っているのは、綾乃ちゃんだけなの・・
だからわざと驚いたように言う。

「なにするのっ!!」

綾乃ちゃんが、即座に動いて私に向かってきたの。
私は、とっさに彼女に向かって身構える・・・

けど・・・

「待って、綾乃ちゃん!」

朔夜くんが、静止したの。
綾乃ちゃんは、ピタっと止まって。

「なんで止めるのよ!」

と、朔夜くんに文句を言っているの。

あたしも、

「なんだ・・やんないの?」

と、挑発する。

「喧嘩はやめようよ・・・ぼくが謝ればすむことなんだから・・・・」

「朔夜くんは悪くないのに、なんで謝るのよ!」

綾乃ちゃんは、納得できないみたい。
当然よね、私が同じ立場だったら、絶対に納得できない....でも、

「でも、それで治まるのならば、そのほうがいいよ」

と、なんか弱気なというか・・・平和的というか・・・・
朔夜くんらしくない発言よね〜・・・・

綾乃ちゃんは、そんな朔夜くんを見て呆れた感じになってる。

とにかく、これじゃ〜計画が失敗に終わっちゃう・・・・
どうしようかしら・・・・

「喧嘩じゃなければいいんでしょ?」

少しの沈黙の後、不意に綾乃ちゃんがある提案をしてきたの。

「彼女をあたしたちのアレに招待するの・・・異種格闘技戦ということで」

「ええーー!?」

朔夜くんが驚いて、声を挙げた。
何を言い出すんだって感じね。

それを聞いて、私も

「なにかしらないけど、お招きに応じるよ」

と言ってあげたの。

そしたら、綾乃ちゃんは不適な笑みを浮かべながら、

「ご招待してあげる・・あたしたちのプロレスサークルSYURAに!」

強く言ってきた。

それにつられて、私も不適な笑みを浮かべちゃった・・・
だって私の思惑どうりに、ことが進んできたんだから・・・・

さーって・・いそがしくなってきたわよ〜


5 秘密の第二試合



日曜日、試合当日。中学校の体育館。

「もう、準備は出来ているわよ・・さっそく始める?」

集まった朔夜くんたちにそう言った。

他の女の子たちは、ちょっと記憶を操らせてもらって、
私の事は最近入会した三年生ってことになっているから、めんどうな説明などしなくても大丈夫。

「ええ〜!?、丸めたマットをコーナーにして大丈夫なの?」

「これだと、すぐに倒れてしまうんじゃ・・」

え〜と・・・リボンの女の子・・たしか、朔夜くんの妹の流花ちゃんと、
その隣の撫子タイプの・・弥生ちゃんがそう言って来たの。

「大丈夫、触ってみて」

と、私。

すると、二人共リングに近寄ってコーナーポストに触って押したり蹴ったりしてみるんだけれど、当然びくともしない。

「ホントだ〜!」

流花ちゃんが驚いて言うんだけれど、私の霊力で固定しているから当然なんだけどね。

「ロープもしっかりと巻いてありますし、これなら大丈夫ですね」

「ええ、安心して試合してね」

と、私は微笑みながら言ったの。

「それじゃあ、みんな準備して」

と、朔夜くん。

「はーい!」
「はーい!」
「はーい!」

女の子三人は、用具室の方へ走っていった。
私は、一瞬でコスチュームチェンジできるからわざわざ今着替える必要は無いのよね〜。

そして、その姿を見送っていたら朔夜くんが、

「すみません、奈々子さん・・・いろいろと協力してもらっちゃって・・・」

と、言ってきたの。
首謀者が、私とも知らずに。

「いいのよ、私も朔夜くんたちのサークルには参加してみたかったんだし」

「はい・・・でも、奈々子さんは第二試合ですけど・・どうするんですか?・・まだ決まっていないですよね?」

と、朔夜くん。

ちなみに、今日のカードは・・・・・

『第一試合 堀部流花VS川元弥生』・・・・・小学生二人の対戦なの。

続いて、第二試合なんだけど・・・・

『第二試合 城ノ内奈々子VS堀部流花・川元弥生』・・・・・ハンディーキャップをやるんだけど。

・・・でもこれは誰も知らないの。

朔夜くんにはこれから話すんだけど〜・・第一試合が終わったら、二人に私が挑戦するの。
小学生相手なら、これでも足りないかもしれないけどね。

流花ちゃんと弥生ちゃんがどういう反応するか、楽しみね。

そして、第三試合は今日のメイン。

『第三試合 成瀬綾乃VS山本神楽』

の異種格闘技戦!

ちなみに、神楽ちゃんとすみれちゃんは一時間後にここに来る予定。
もちろん、逃げなければだけどね・・フフ

「実はね・・」

私の第二試合のカードを朔夜くんに教えてあげたの。

「ええー!?」

朔夜くんは驚いて目を見開いた。

「準備できたよ〜」

流花ちゃん達が用具室から出てきた。

流花ちゃんと弥生ちゃんはそれぞれの入場コスを着ていて、綾乃ちゃんはジャージを着てる。

「よ〜し、それじゃあ早速始めようか」

と、朔夜くん。

「うん!」

「はい!」

二人が頷いた。

「今日はどっちが、先にリングインするの?」

と、綾乃ちゃん。

「弥生ちゃん、先にいいよ」

「わかった、今日は私が先に上がるね」

と、弥生ちゃんに決定。

そして、

「綾乃ちゃん、レフリーお願いできる?」

と、私は綾乃ちゃんにレフリーをお願いしたの。

まさか、いつも朔夜くんと試合するように篭手を使うわけにはいかないしね。

「いいですよ」

と、綾乃ちゃんは快く引き受けてくれて・・・・

・・・私はというと、

「それと、私にリングアナやらせてもらっていい?ちょっとやってみたいことがあるの」

「やってみたいこと?・・・べつに、いいですけど・・・」

「ありがとう、それじゃやらせてもらうわね」

と、二人のテーマ曲のCDを拾い上げる。

「奈々子さん、どうするんですか?」

と、朔夜くんが訊いてきたんだけど、

「後でのお楽しみ♪」

と言って、ステージの方へ走っていく。
そして、向かうはステージの上の放送席。


6 リングアナ、奈々子さん



「到着〜♪」

放送席のドアの前に到着した私は、そのままドアをすり抜けて中に入ったの。

そして、中にある機材のスイッチを入れて・・・
最初にリングインする、弥生ちゃんのCDをセット!

「準備できたよー!」

私は、窓から朔夜くんたちに向かって叫んだの。
そしたら、

「こっちもOKでーす!」

と、朔夜くんが手を挙げて応えた。
弥生ちゃんと流花ちゃんの姿が見えなかったから、すでに配置についているのね。

それじゃ、いきましょう♪

「レッツ・プレイ!」

私は、マイクのスイッチを入れた。

「それでは、青コーナーより・・・川元弥生選手の入場です!」

すぐさまCDのスイッチをオン!
スピーカーから、弥生ちゃんのテーマ曲が流れ始める。

そしたら、下のステージの入り口からガタンッって音がしたの。
フフ・・弥生ちゃん、ドアを蹴りで開けたのね。

そして私は〜、マイクに向かって〜

「真っ白の道着に身を包み、リングへ向かう空手界のプリンセス・・・・川元弥生!
 一撃必殺の精神で闘いに望むその姿は、まさに現代のジャンヌダルク!」

語り始めたの♪・・・・・そうしたら、


ガタンッ

何かが倒れる音がしたの。
音はリングの方からね・・・・・なにかしら・・・

「あら?」

窓から、リングの方を見ると・・・・

「朔夜くん、だいじょうぶかしら?」

イスに座っている朔夜くんが、ひっくり返っていたの。
どうしたのかしら?

しかも、アバラを抑えて苦しそうだし・・・・

綾乃ちゃんは、朔夜くんを介抱している。
そして、入場してきた弥生ちゃんは驚いた表情で私の方を見上げていて・・・
流花ちゃんも、用具室の入り口からこっちを見てる・・・・・

・・・・う〜ん・・そんなに驚くことかしら?
まあ・・私も初めての試みだったんだけどね・・・・

とにかく・・・

「はいはい、驚いてないでリングインしてね」

私は、マイクで弥生ちゃんにそう言ったの。
そうしたら、弥生ちゃんは足早にリングに向かっていって、リングイン!

そして、中央に向かって・・

『押忍』

と、空手式の礼をしたの。これで、弥生ちゃんはOK♪

私は、CDを止めて抜き取って・・・・さて・・・・お次は流花ちゃんね。

今度は流花ちゃんのCDをセット!
そして、マイクで、

「赤コーナーより・・・堀部流花選手の入場です!!」

と、リングコール!同時に、CDもスイッチON♪

少しして、スピーカーから流花ちゃんのテーマが流れ出してきたの。
さてと・・流花ちゃんは・・・

「体操着に包まれた小さな体から繰り出される空中殺法!
 華麗にリングを舞うその姿は、天使か小悪魔か!?」

更衣室から、流花ちゃんが出てきて楽しそうにリングに向かって歩いていくんだけど・・・・
弥生ちゃんとちがって、あまり緊張感が見られないわね〜・・・

リラックスしているというか、なんというか・・・・あ・・・流花ちゃんが・・

「堀部流花が今・・・トップロープに飛び乗って〜・・」

トップロープに飛び乗って、

「お兄ちゃーーん!」

って、朔夜くんに手を振ったの。
これって、弥生ちゃんに対する挑発かしら?

そして、

「ヤア!」

「ムーンサルトで、リングに着地ーー!堀部流花リングに降臨ーー!!」

流花ちゃんが、リングインしたところで私もリングサイドへ行こ〜っと♪


7 今日は私が勝つから!



というわけで、リングサイドへ戻ってきたんだけど〜

「奈々子さ〜ん・・いきなりなんなんですかあれは?」

朔夜くんが笑いながら言ってきたの。

「あれって?」

と、訊くと、

「入場してくる時のアレですよ〜」

と、弥生ちゃんも笑いながら言ってきたの。

「ああ、アレね・・あの方が面白いでしょ?」

「おもしろいけど、いきなりだから驚いちゃった」

と、流花ちゃん。

「奈々子先輩、私の時もやってくださいね」

と、綾乃ちゃん。

「いいわよ、まかしといて」

フフフ・・面白くなってきたわね〜

さてと・・・そろそろリングに上がってと・・・・・

「それでは、本日の第一試合を行います!!」

私はリング中央で、マイクを取り出してコールを始めたの。

「青コーナー・・・空手プリンセス・・川元〜〜弥生〜〜〜〜!!」

弥生ちゃんが帯を解いて、道着を投げ捨てた!!

その下からは濃紺のスクール水着が出てきた!
これが、弥生ちゃん達の小学校の水着ね。

「わーーーーー!!」

朔夜くんが、歓声と拍手をする!

それに応えるかのように、弥生ちゃんが右手を挙げた!!
少々恥らっているのが、かわいいわね。

さてと・・お次は・・・

「赤コーナー・・・暴走天使・・堀部〜〜流〜〜花〜〜!!」

今度は流花ちゃんが、体操着とブルマーを脱ぎ捨て、スクール水着になった。
そして、声援を送る朔夜くんに、

「わーーい!」

手を振っているし。
なんか、これから試合するようには見えないわね・・・・

・・とにかく、早速試合と行きましょう。

「それじゃあ、二人ともがんばってね」

私は二人に声をかけると、リングを降りて朔夜くんが座っているイスの隣のイスに腰掛けたの。
レフリーは綾乃ちゃんに任せて、私は観客になるの。

「流花ちゃん・・今日は私が勝つから!」

と弥生ちゃんが真剣な表情で言うと、

「無理だよ〜!また返り討ちにしちゃうから〜!」

流花ちゃんが、笑顔でからかうように言い出したの。
フフフ・・・おもしろそうね。

朔夜くんの話では、二人はほぼ互角だけど・・いまのところ流花ちゃんの方が勝ち越しているそうね。
今日はどっちが勝つかしら?

「それでは・・二人ともOK?」

流花ちゃんと弥生ちゃんは、互いに握手して各コーナーに戻る。
さあ〜いよいよね!

「それじゃ〜・・・・・・ファイッ!!!」

綾乃ちゃんの掛け声と共に、スクール水着を着た妖精達の試合が始まった!!


8 第一試合 川元弥生 vs 堀部流花



さあ〜始まったわよ〜〜!

まずは二人とも、リングを回って睨みあっているわね〜。
これからどう動くかしら?・・・あら?

「弥生ちゃん!」

流花ちゃんが手を出して、力比べを挑んだ。

「望むところよ!」

弥生ちゃんが手を出して、二人がガッチリと組み合う。
そして、互いに押し合うんだけど・・・・

「う〜〜〜〜!!」

「く〜〜〜〜!!」

やっぱり空手をやっているだけあって、弥生ちゃんが徐々に流花ちゃんを押していく。

「ヤアッ!」

弥生ちゃんが、流花ちゃんの足を払ってリングに倒した!

「キャッ!?」

流花ちゃんダウン!
そこで弥生ちゃんは、関節に持っていくのかと思ったんだけど・・・・

バシッ!

起き上がろうとした流花ちゃんに、キック一発!

「キャンッ!!」

悲鳴を挙げる流花ちゃん。

「立ちなさい、流花ちゃん!」

倒れた流花ちゃんの腕を取って起き上がらせる弥生ちゃん。
そして、肩越しに流花ちゃんの頭を掴んで投げ飛ばす!

フライングメイヤー!

「キャーーッ!!」

またもダウンする流花ちゃん!
いきなり弥生ちゃんの猛攻が始まったけど、流花ちゃん大丈夫かしら?

「このーー!!」

あーっと、弥生ちゃんジャンピングエルボードロップ!!・・・・あ・・でも・・

「きゃっ!?」

流花ちゃんが、転がって避けた!
当然、弥生ちゃん自爆!

「さあ〜弥生ちゃん!」

素早く起き上がった流花ちゃんが、弥生ちゃんを起き上がらせてロープへ振った!
同時に、流花ちゃんもロープに走る!

そして戻ってきた弥生ちゃんに、

「いっくよーー!!」

流花ちゃんが飛んだ!!

フライングボディーアタック!!

「キャアアアアアアア!!」

弥生ちゃんにきまった!!

「おおーーー!!」

朔夜くんも驚いている。
そして流花ちゃんは、そのままフォール。

そこで、綾乃ちゃんがカウントを取り始めたの。

「ワン・・・ツー・」

「くっ・・」

そこで弥生ちゃんがすぐに返す。
さすがに、すぐにはやられたりはしないわよね。

「やるわね、流花ちゃん!」

「当たり前だよ、今日も流花が勝つんだから!」

立ち上がった二人が、言葉を交わす。

「何言ってるの!、私が勝つんだもん!」

弥生ちゃんが、流花ちゃんに右のローキックを放っていった!
それを流花ちゃんが、左足を挙げてガードする。

そしたら、弥生ちゃんがすかさず左の上段回し蹴り!

「わっ!?」

流花ちゃんが驚いてあわててガードするけど・・・完全にはガードできなくて・・・

「キャアッ!」

ぐらつく流花ちゃん。
そこで、弥生ちゃんがラリアート・・・いえ!

「くらえ!」

ラリアートしながら飛んだ!
ジャンピングネックブリ―カードロップ!

「キャアアアーーッ!!」

流花ちゃんダウン!
弥生ちゃんは、ダウンした流花ちゃんをそのままに、ロープへと走る!

「うう〜・・」

そしてゆっくりと起き上がった流花ちゃんに、ロープの反動で戻ってきた弥生ちゃんが、

「いくわよーー!!」

フライングニールキーーック!!!

朔夜くんに聞いた弥生ちゃんの必殺技が、流花ちゃんに炸裂!!

「キャアアアーーーーーッ!!!」

流花ちゃん、ダウン!!
これはかなり効いたわね。

「フォール!」

すかさず流花ちゃんの片足を取って、覆い被さる弥生ちゃん。
そこで綾乃ちゃんが、

「ワン・・・ツー・・・」

カウントを取り始める。
でも、ツーで流花ちゃんが返した。

「まだやられないもん!」

立ち上がった流花ちゃんは、弥生ちゃんにそう言うんだけど・・・
平気な顔しているけど、弥生ちゃんよりはダメージはありそうね。

パシッ

うわ〜痛そう〜・・・

いきなり、弥生ちゃんの平手が流花ちゃんに炸裂!

「さっさとやられちゃいなよ!流花ちゃん!!」

パシッ

さらに平手をする、弥生ちゃん!
だけど・・・

「弥生ちゃんこそ、無駄な抵抗はやめなよ!!」

パシッ

流花ちゃんも平手を返す!!

「うるさいわね!!」

パシッ

弥生ちゃんも負けてはいない!!
なんか、すごい闘いになってきたわね〜・・・・

「やったなコノーーー!!」

平手を喰らいながらも、流花ちゃんが弥生ちゃんに組み付いた。

だけど・・・・

「ほらほら、どうしたの流花ちゃん!!」

弥生ちゃんが、流花ちゃんの首に両腕を巻きつけて流花ちゃんの体を曲げて、膝蹴りの連打!!
ドスドスと流花ちゃんにヒットしていく!

「キャッ・・うぐぅ・・・あぐぅ・・・」

鈍い悲鳴を挙げる流花ちゃん。
防ごうとはしていても、防ぎきれずに次々にヒットしていくの。

このまま流花ちゃんのKO負けになってしまうかしら?・・それともレフリーストップかな?・・
綾乃ちゃんも、様子を見ているけど・・・・このままじゃ・・・

「終わりよ!流花ちゃん!!」

弥生ちゃんが、少し体を離すと同時に足を振り上げたの。
あれは・・かかと落しをやるつもりなのね!!

あんなの今の流花ちゃんが喰らったら、完全に終わるわよ!
だけど・・・

「うわああああ!!」

流花ちゃんが叫びながら、ショルダータックルで突っ込んでいったの!!

「キャッ!?」

不意を突かれた弥生ちゃんは、そのままダウン!
流花ちゃんの反撃ね!

「この!この!」

倒れた弥生ちゃんを、流花ちゃんがストンピングで蹴りはじめた!

「キャッ!・・イヤッ!・・」

何とか転がって逃げようとする弥生ちゃん。
そして起き上がろうとしたときに、

「逃がさないもん!!」

流花ちゃんが弥生ちゃんを、ヘッドロックで捕まえる。

「こ〜の〜!」

弥生ちゃんを掴んだまま、流花ちゃんはロープへと寄って行って、

「いくよーー!」

ロープを駆け上って、そのまま弥生ちゃんを押しつぶした!

「アアアアーー!!」

悲鳴を挙げる、弥生ちゃん。

流花ちゃんは、そのまま体固めに入る!
そして、カウントをとる綾乃ちゃん。

「ワン・・・ツ」

「イヤッ・・」

あ・・・今度はツーになる前に返した!
すごいわね・・・もしかしたらと思ったんだけど、あっさり返すなんて・・・

「ハアハア・・・」

でも、息が切れ始めてる・・・流花ちゃんの方が不利ね。

「しぶといな〜弥生ちゃんは・・」

流花ちゃんが、弥生ちゃんの腕を取って起こす。

「とお!!」

流花ちゃんが、弥生ちゃんの頭を押さえながら飛んだ!!

フェイスクラッシャー!!

「イヤアアアアッ!!」

弥生ちゃんがの顔がマットに食い込んだ!
これはかなり効いたわね・・・・・

弥生ちゃんは、うつ伏せに倒れたまま動けないみたい・・・

「終わらせちゃうよ〜!」

流花ちゃんがそう言うと、弥生ちゃんの足を掴んで自分の足と絡めだした!

「あ・・・イヤ・・」

弥生ちゃんは逃げようとするけど、流花ちゃんは放さない。
そして足を絡めたまま、体をきれいに仰向けに反らせながら弥生ちゃんの首を掴んだ!

この固め技ってたしか・・・・そうよ・・鎌固めだわ!!



「ああ・・・ああああーーーー!!」

湧き上がる、弥生ちゃんの悲鳴。

「ギブアップ?」

綾乃ちゃんが、ギブを問うているけど・・・・
手を振って、NOと言う弥生ちゃん。

でも、完全にきまっているし・・・・あの体勢からじゃ・・・

「ギブしちゃってよ、弥生ちゃん!!」

流花ちゃんが、叫ぶ。

「ノ・・・ノォーーー!!」

必死に叫ぶ弥生ちゃん。

確かにこれだと・・・・あれ?・・・・ううん、無理じゃないよ。

だって・・・・・・ほら。

「くーー・・・ううう〜〜・・・」

弥生ちゃんが、手を伸ばす。
その先にあるのは、ロープ。

そしてそれを・・・・・

「く・・・・」

掴んだーー!

助かったわね、弥生ちゃん!

「ほら、ロープよ流花ちゃん!」

綾乃ちゃんが、流花ちゃんの鎌固めを解く。

「あ〜あ・・・」

流花ちゃんが、残念そうに技を解いて立ち上がった。
流花ちゃんも、残念ね〜

「ハアハアハアハア・・・・・」

弥生ちゃんも、息を切らせながら立ち上がっていく。
・・・・・・かと思ったら、流花ちゃんにタックルを仕掛けていった!!

「キャッ!?」

いきなりの事で、組みつかれちゃった流花ちゃん。
弥生ちゃんは、流花ちゃんの腿と肩を捕えて持ち上げ、そのまま後ろに倒れこむ!!

バックフリップ!!

「キャアアアアーー!!」

マットに叩きつけられた、流花ちゃん。

「くく・・・」

「よくもやったわねーー!!」

今度は弥生ちゃんが、流花ちゃんにストンピングの連打!
ガシガシッと流花ちゃんを踏みつけていく!

「キャ!!イヤアーー!」

しかし、流花ちゃんは喰らいながらも転がって、リングの外へ出ちゃった!

「フフ―ンだ!ここまでおいで〜!」

挑発する流花ちゃん。

「いいわよ!受けてたってあげるわよ!!」

弥生ちゃんは、トップロープに登りだした!!
そこから飛ぶ気!?

「ここだよーー」

さらに挑発する流花ちゃん・・・すると、

「タアーーーッ!!!」

弥生ちゃんが、そこから飛んで流花ちゃん目掛けて、手刀を打ち落としていったの!!

ガツッ

見事、流花ちゃんに命中!!

「キャアアア!!」

おそらく手刀が来るとは思ってもいなかったのね・・・
まともに喰らった流花ちゃんは、頭押さえてかなり痛そう。

そして弥生ちゃんは、流花ちゃんに左中段廻し蹴り!!

「ぐふうう〜〜〜・・・・」

流花ちゃんの胸に、炸裂!!
流花ちゃんは、その場に崩れ落ちそうになるけど・・・弥生ちゃんがそれを抱きとめて、

「コノーー!!」

コーナーに振った!!

「キャアアーーー!!」

コーナーに激突して、崩れ落ちる流花ちゃん。
その流花ちゃんに、近づいていく弥生ちゃん。

「イレブン・・・トゥエルブ・・・」

綾乃ちゃんが、場外のカウントを取っているんだけど、いつのまにか11,12まで数えられていたの。
それを聞いた弥生ちゃんは、流花ちゃんを放っておいてリングに戻っていく。

流花ちゃんはというと・・・・・

「くう〜・・・」

フラフラと起き上がって、綾乃ちゃんが16くらいを数えた時に、リングに戻った。
そして、キッと弥生ちゃんを睨んでいる。

弥生ちゃんも、構えたまま流花ちゃんを睨んでいる。
これから、どう動くのかしら?


9 逆転!ドラゴンスリーパー!!



しばらくして、二人が同時に向かっていった!!

「ヤアッ!!」

「トーッ!!」

二人が同時に、ドロップキックを放った!!
でも・・・

「キャッ!」

「アグ・・」

相打ちになっちゃった・・・・

二人ともダウン・・・・大丈夫かしら?・・・
二人とも体力がそろそろ尽きる頃だし・・・・

あ・・・でも・・・

「くぅ〜〜・・・」

流花ちゃんが先に起き上がっていき、その後に弥生ちゃんが起き上がっていくんだけど・・・

「弥生ちゃん、勝負はこれからだよ・・・・」

流花ちゃんが、丁度起き上がった弥生ちゃんに組み付いた。
そして、コーナーに向かって弥生ちゃんを振った!

「キャッ!!」

弥生ちゃんは、背中からコーナーに激突!

「いっくよーーー!!」

流花ちゃんの声に弥生ちゃんが顔を挙げると、
既に流花ちゃんが側転をしながら、弥生ちゃんに迫ってきていた!

あれは・・・スペースローリングエルボーをやる気なのね!!
弥生ちゃんに、あせりの表情が見える。

「くらえーーー!!」

流花ちゃんのエルボーが、弥生ちゃんを突き刺した!!

「ガフッ・・・」

弥生ちゃんは、打たれた胸を押さえてマットの中央によろけて・・・・

「・・・・・・・・クッ・・・・」

バタリと、うつ伏せにダウン。

その弥生ちゃんを、流花ちゃんはひっくり返して仰向けにさせる。
いよいよフォールかしら?・・・

「弥生ちゃん・・・流花・・・・」

朔夜くんも、固唾を飲んで見守っている。
今の朔夜くんの心境は、結構複雑なんじゃないかしら?

「ハアハアハア・・・・見ててねお兄ちゃん」

流花ちゃんが朔夜くんにそう言うと、フォールはしないでコーナーポストに登りだした。
流花ちゃんの必殺技の、ムーンサルトをやるつもりなのね!?

「トオーーーーーー!!」

流花ちゃんが、宙を舞った!!

案の定、ムーンサルトプレス!!!

無重力の爆弾が、弥生ちゃんに炸裂ーー!!

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーッ!!!!」

体育館中に響く、弥生ちゃんの悲鳴!
さすがに、これは流花ちゃんの勝ちね。

弥生ちゃんは、もう返すことはできないわ。

「終わったわね・・・・」

私は弥生ちゃんを見つづけながら、隣の朔夜くんに言う。

「はい・・・」

朔夜くんも、うれしいのか残念なのかわからない返事をしたの。
でも、どちらにしろ綾乃ちゃんがカウントを数えて、三秒後には・・・・

「ええ!?まだ!?」

私は驚いて声を挙げた。
流花ちゃんが、そのままフォールには行かずに、再びコーナーへ行った。

勝利を確信していて油断したのか?
それともただ単にもう一回ムーンサルトをやりたいのかわからないけど・・・・
それ以上やる必要は・・・・・

「ああ!?」

今度は朔夜くんと同時に、声を挙げた。

コーナーに流花ちゃんが上り終えるときに、弥生ちゃんが立ち上がった!

立っているのがやっとみたいだったけど、その眼からは闘志を感じられる。
そして、コーナーにフラフラと駆け寄った!

「ええ!?」

それに気付いた流花ちゃんが、コーナーを降りようとしたけど間に合わない!
弥生ちゃんに後ろから組み付かれて、そのまま裏投げで投げ飛ばされた!!

「キャーーーーーッ!!」

悲鳴を挙げる流花ちゃん。

マットに叩きつけられた流花ちゃんは、ダウンしたまま動けない。
コーナーからの雪崩式の裏投げだから、かなり効いたはずよ!

「油断したわね・・流花ちゃん・・・・」

弥生ちゃんが、流花ちゃんを起き上がらせて、弥生ちゃんはロープへと走る。
そしてフラフラと戻ってきて、かろうじて立っている流花ちゃんに、

「タアーーーー!!!」

フライングニ―ルキック!!

「キャアアアアアアアアアーーーーーーー!!!」

流花ちゃん、派出にダウン!!

「ハアハアハア・・・・・流花ちゃん・・・」

同じように、マットに倒れている弥生ちゃんが流花ちゃんに覆い被さって、フォール!
すかさず綾乃ちゃんが、

「ワン・・・・ツー・・・・」

カウントを取り始め、

「ス」

リーとなる前に、流花ちゃんが肩を挙げた!!

まさに2、999!!

「おおおーーーー!!」
「おおおーーーー!!」

私と朔夜くんは、思わず床をドドドと踏み鳴らしちゃった。

弥生ちゃんの逆転勝ち!?と思ったけど、流花ちゃんもやるわね〜。
まだまだ終わらせはしないってことね。

「ハアハア・・・ハアハアハア・・・・・・」

弥生ちゃんが起き上がって、倒れたままの流花ちゃんの腕を取って起こしたの。
そして流花ちゃんの首に、自分の腕を巻きつけてそのまま後ろへひっくり返っていく!

DDT!!

「アアアアアアアーーーー!!!」

悲鳴を挙げる、流花ちゃん!
そこで、すかさずダウンした流花ちゃんの首を、脇で鋏みこんだ!

ドラゴンスリーパー!!

「アアアアアアアアアアアアアアーーーーーー!!!」

さらに大きな悲鳴を挙げる、流花ちゃん!!
弥生ちゃんは、脇で流花ちゃんの首を挟んだまま放さない!!

「いやああああーーー!!・・・・アアーー!!・・・・」

なんとか振りほどこうとする流花ちゃん。
でも、体力がかなり消耗しているために解けない。

「流花ちゃん!!ギブアップして!!」

弥生ちゃんが必死の表情で、叫ぶ!

「イヤだーーーーッ!!・・・・アアアアーーー!!・・・・・ゲウッ!!」

流花ちゃんはさらに振りほどこうと足をバタバタさせて、弥生ちゃんの顔を蹴りだしたの!
さすがに体操やっているだけあって、体はかなり柔らかいわね。

「クッ・・・・・このっ!!」

弥生ちゃんがさらに力を込めた!!

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーッ!!!!」

さらに大きな悲鳴とともに、もがく流花ちゃん。
そして、苦し紛れなのか・・・弥生ちゃんの頭の方に手を伸ばしていって・・・・

「キャアアアーーー!!」

流花ちゃんが、弥生ちゃんの髪を掴んだの!!

「イタイイタイーー・・・放してーー!!」

ドラゴンスリーパーで、締めつづける弥生ちゃん

「アアアーーー!!・・・イヤーーーー!!・・・・放せーーーー!!」

弥生ちゃんの髪を引っ張りながら、もがきつづける流花ちゃん

私と朔夜くんは、ただその有様を見守る事しか出来ないでいたの・・・・・
そして、綾乃ちゃんもギブを訊かずに、ただ呆然と見ていたの・・・・

「イヤーーーーーーーーーーッ!!!」

「ギャーーーーーーーッ!!!」

凄い・・・闘いになってきちゃったわね・・・・・

これは・・・どうするの?・・・・朔夜くん・・綾乃ちゃん・・・・
止めたほうがいいかしら?・・・・・

これ以上は・・・・もう・・・・

ああ!?

「あああ・・・・ああああ・・・・・」

流花ちゃんが、弥生ちゃんの髪を放した!

そして・・・・

「ギブ・・・・・アップ・・・・・」

流花ちゃんが、力なくそう言った・・・・・


川元弥生
(26分12秒 ギブアップ)
(ドラゴンスリーパー)
堀部流花×


10 決定!ハンディキャップマッチ!



流花ちゃんが、ギブした途端

「〜〜〜〜〜」

ドラゴンスリーパーを解いた弥生ちゃんが、死にそうに息を吐いてそのまま後ろに倒れたの。

「弥生ちゃん!流花!!」

朔夜くんが、リングに駆け込んで倒れている二人を抱き起こした。
私も、それに続いてリングに入っていった。

「二人とも大丈夫?」

綾乃ちゃんが、その傍に座って声をかける。

「なんとか・・・・大丈夫です・・・」

「死にそうだけど・・・」

弥生ちゃんと流花ちゃんが、苦しそうに応えた。
アレだけの激戦だったもんね。

「二人ともナイスファイトだったわよ」

と、二人に声をかけたの。

「ホント・・いつもながら、すごかったよ」

と、朔夜くん。

「でも、今日は弥生ちゃんに負けちゃった・・・・」

流花ちゃんが、残念そうに言う。

「どっちが勝ってもおかしくなかったわよ」

綾乃ちゃんが、フォローして、

「はい・・・流花ちゃんが、ムーンサルトのままフォールされていたら、私が負けていたわよ」

と、弥生ちゃんもそう言った。

「あーだったら、あのままフォールしておくんだった〜〜」

「今度は油断するなよ、流花」

朔夜くんも、笑顔でそう言った。

そして・・・・・

「ねぇ・・・・流花ちゃんと弥生ちゃんの二人を見込んでお願いがあるんだけど〜」

私は、切り出した。

「この後・・・私と試合してくれない?二対一で」

「ええーー!?」
「ええーー!?」

お二人と綾乃ちゃんが、驚きの声を挙げた。

「先輩・・・・二人とも試合したばかりですよ」

「休憩時間は取るわよ、それに二対一のハンディーキャップマッチなんだけど〜〜どうかしら?」

と、私。

すると、二人は顔を見合わせて、

「もちろんです!!」

「流花は誰の挑戦でも受けるよ!!」

二人が同時に応えた。

「流花ちゃん・・弥生ちゃん・・・」

綾乃ちゃんが心配そうに言うんだけど。

「綾乃さん、大丈夫ですよ」

「そうだよ、流花と弥生ちゃんが組めば負けないよ」

と、二人が元気に応えたの。

そして朔夜くんは、

「綾乃ちゃん・・・本人達がそう言っているんだから、やらせてみようよ」

苦い顔しながらそう言った。

「仕方ないわね・・・」

綾乃ちゃんも、渋々といった感じに承諾したの。
これで、第二試合は決まりね。

私・・城ノ内奈々子と堀部流花・川元弥生組の試合。

これも私の策略の一つなの〜

「決まりね♪」

私は立ち上がって、

「ちょっとアップしてくるから、お二人はゆっくり休んでいてね」

そういって、私はリングを降りていったの。

幽霊らしく冷たい微笑を浮かべながら・・・・・

フフフ・・・・


11 奈々子さんチェンジ!



用具室の中。
私は朔夜くんに手伝ってもらって、柔軟運動をしているの。

この後は、朔夜くんのサークルでの私のデビュー戦!
すごく気合が入ってくるわね。

「あの・・奈々子さん」

私の背中を押す朔夜くんが、訊いてきた。

「なあに?」

「そのルールで、やればいいんですね?」

「そうよ、お願いね」

先程、レフリーをやる朔夜くんに私が考えたルールを話したの。
どうゆーのかというと・・・・・まあ、それは試合のときに・・・ありがちなルールだけどね。

とにかく、いくら小学生相手でもこれくらいはしておかないと、どうなるかわからないし。

「わかりました」

そしたら、戸が開いて、

「奈々子先輩、そろそろいいですか?」

綾乃ちゃんが、呼びに来た。

「あら?・・あの二人もう始めていいの?」

「はい、これだけ休めば充分だそうです」

ふ〜ん・・・元気ね〜

「いいわ、それじゃこれから入場コスに着替えるから五分ほどしたらコールして」

「わかりました、ところで先輩が一試合のときにやったアレ、先輩にやっていいですか?」

アレというのは、入場の時の解説のことね。

「いいわよ、でも変なこと言わないでよ」

「はい!、それと朔夜くんもリングで待機していてね」

綾乃ちゃんは、そう言うとうれしそうに放送席へと向かって行っちゃった。
余程気に入ったのね、アレ・・・・

「それじゃ、ぼくもリングで待機しています」

「うん、よろしくね」

朔夜くんも、用具室を出た。
残された私はというと・・・・・

「それじゃ・・・・・ハイ!」

魔法少女みたいに、一瞬のうちに入場用のコスにチェンジしたの。
でも魔法少女じゃなくて・・・幽霊少女なのよね〜私って。

ちなみにコスは朔夜くんと試合する時と同じ、競泳用水着の上に白い剣道着!
そして、木刀!・・・・これは武器じゃなくて飾りなんだけどね、入場用の♪

これが私の入場用コスなの。

初めてめて朔夜くんと試合した時は、防具もつけていたんだけど・・・・あれは外すの面倒だから、やめた。
ま〜・・こんなものかしらね・・

後は、綾乃ちゃんがコールしてくれるのを待つのみ。


12 ルールは守ってね



五分後、用具室の入り口がノックされて、

「奈々子さん、いいですか?」

朔夜くんが、呼びにきたの。

「いいわよ」

私も返事する。
すると、朔夜くんがリングへと戻る足音がしたの。

さ〜〜いよいよ始まるのね!

なんか少し、ドキドキしちゃってる・・・・
他の人と闘うのは初めてだし

「それでは、赤コーナーより・・・城ノ内奈々子選手の入場です!!」

綾乃ちゃんが、コール!そして・・・・

チョーーーンッ

ことの音が一つ、大きく響き・・・・・風の音が、サーーッとスピーカーから漏れる。
これが、いつもの私のテーマ曲

どお?、幽霊にぴったりでしょ?

「それでは、行くわよ〜!」

私は、ガラッと用具室のドアを開けた。
そして、そのままリングへと歩き出す。

その時、青コーナーでは流花ちゃんと弥生ちゃんが不適な笑みを浮かべて待ち受けていたの。

気合充分ね。

「白い剣道着に身を包んだ女剣士が、戦場へと足を運びます!
 そしてその目から感じる意思は、ただ『斬る』ことのみ!!」

ふ〜ん・・・綾乃ちゃんも、なかなか面白い事言うわね。
とりあえず、リングに到着〜!

リングに向かって、一礼して・・そしてロープをくぐって・・・・

「女剣士、城ノ内奈々子が・・今、リングインッ!!」

リングインした後、私は木刀をリングの外に置いたの。
これを使うわけにはいかないわよね・・さすがに。

そして、綾乃ちゃんが走ってリングに到着。
そのままマイクを口元に持っていって、

「それでは、第二試合ハンディーキャップマッチを行います!!」

と、第二試合開始の宣言。

「青コーナー・・・・堀部流花・川元弥生組・・・シスタープリンセスーー!!」

綾乃ちゃんが、流花ちゃんと弥生ちゃんをコール!

「わーーーーーー!!」
「わーーーーーー!!」

私と朔夜くんが、拍手をする。
それに応えるように、両手を挙げるお二人さん。

・・・・・シスタープリンセスって、二人のチーム名かしら?

「赤コーナー・・」

あ、私ね。

「ミス・サムライ・・・城ノ内奈々子ーーー!!」

「わーーーー!!」
「わーーーー!!」
「わーーーー!!」

流花ちゃん・弥生ちゃん・朔夜くんが拍手!!
私は、袴の紐を解き・・・道着と袴を場外へ放り捨てた!!

う〜ん・・決まったわね〜!!

「!?」
「!?」
「!?」

そしたら、女の子三人が私の胸を見て一瞬怯んだの。
まあ〜他のみんなは、私より小さいからね〜。

「それじゃ、双方ともがんばってください」

綾乃ちゃんは、リングを降りた。

「それじゃ、ルールを説明するよ」

「と言っても、ほとんどは普段と同じなんだけど、二人がかりで攻撃するのは反則だからな、いいね?」

「はーい」
「はーい」

二人が返事をするけど・・・本当に守ってくれるかしら?

・・・ま、それでも負ける事は無いけど〜。

「それじゃ、よろしくねお二人さん」

私は、二人に手を差し出す。

「負けないよ」

「よろしくお願いします」

二人が交互に、手を握り返してきたの。
そして、互いにコーナーへ戻る。

流花ちゃんが、リングの外に出たの。
あの娘たちは・・シスタープリンセスは、最初に弥生ちゃんが行くみたいね。

「私はいいわよ、朔夜くん」

「こっちもです」

朔夜くんは、頷き、

「それでは、第二試合・・・・・」

いよいよね〜〜!!

「ファイッ!!」

朔夜くんの声が、体育館に響き渡った。


13 第二試合 シスタープリンセス vs 城ノ内奈々子



「さ〜!かかっていらっしゃい!!」

私は、弥生ちゃんを挑発する。
一気に攻めて行ってもいいんだけど、それであっさり終わっちゃったらおもしろくないし。

「それじゃ、お言葉に甘えて・・・」

弥生ちゃんが、体を低くして向かってきたの。

タックルをするつもりね、甘いわよ。
私は腰を低くして身構える。

・・・だけど!

「ヤッ!!」

弥生ちゃんがタックルと見せかけて、いきなり浴びせ蹴りを放ってきたの!!

「え!?・・・・キャアアアアアアアアアアアアア」

私はまともにそれを受けて、後ろへ派出にダウンしちゃった!
そしてダウンした私に、弥生ちゃんが覆い被さってきて、体固めに・・・

「お兄さん、フォールです!!」

「え・・・あ・・ワン・・・・・ツー・・・・・」

あ・・・だめ・・・・

「クッ」

私は、手を伸ばしてロープを掴んだ。

「弥生ちゃん、ロープだ」

「ええ〜・・・」

弥生ちゃんは残念そうに、私の上から起き上がる。

「ああーー・・あと少しだったのに〜〜・・・」

流花ちゃんも残念そうに叫ぶ。

助かった・・・・後少しで、スリーカウント入るところだったわよ〜・・・・
危うく秒殺されるところだった・・・・・ロープが近くにあって助かったわ・・・

「やってくれたわね〜〜」

私は、ロープに捕まりながら起き上がり、弥生ちゃんを睨んだ。

ちょっと頭に来たわよ、弥生ちゃん!

「ヤッ!」

そんな事お構いなしに、弥生ちゃんが私の胸のあたりに右の廻し蹴りを放ってきた。

「クッ・・」

私は、なんとかガードしたんだけど・・・けっこうな威力ね・・・・
腕が痛いわよ。

でも、このまま組み付いて・・・・

「キャアアッ!!」

私は右足に、激痛を感じた。
弥生ちゃんの、左下段廻し蹴りがヒットしていたの。

そして、崩れ落ちそうなところで、弥生ちゃんは私にヘッドロックをかけた。

「くぅ・・・」

足がいたくて、外せない。
弥生ちゃんは、私をリング中央辺りに連れて行く。

「流花ちゃん!」

弥生ちゃんが、ヘッドロックを外して流花ちゃんとタッチする。

「任せて〜!」

流花ちゃんが、素早くコーナーポストに飛び乗った。

(あ!・・・やられちゃう!)

「コォノーー!!」

流花ちゃんがコーナーから飛んだ!!

ミサイルキック!!

「キャアアアーーーーー!!!」

私の豊満な胸に炸裂しちゃった!!
まともに喰らったわたしは、そのままダウン!

くぅ〜〜・・結構効くわね〜〜・・・・・

「まだまだ〜〜」

流花ちゃんが、ロープへ走っていった。
そして戻ってきたところで、私にジャンピングエルボードロップ!

私の胸に、突き刺さったの!

「ぐぅ〜〜」

私は胸を押さえて、もがく・・・・

(なんで胸ばっかり攻撃するのよ〜〜!!)

そして流花ちゃんは、私の上半身を起こして、顔に腕を回してきた!!

フェイスロック!!

「アアッ・・・くうーーーー・・・」

流花ちゃんが、私の顔面を締め付ける。
小学生の力でも、痛いわよ〜〜

「奈々子さん、ギブですか?」

朔夜くんが、聞いてくる。

冗談じゃないわよ!!

「ノーに決まってるでしょ!!」

「あっ!?」

私は、流花ちゃんの腕を強引に外した!

これぐらいで、私が負けるわけがないわよ!

私は振り向きながら、流花ちゃんの足に組み付いた。

「キャッ」

流花ちゃんが逃げようとしたけど、遅い。
そのまま足を払って、流花ちゃんをマットに倒したの!

「キャア!!」

足を掴んだまま、関節に持っていこうとしたんだけど・・・・

スルッ

簡単に足を引っこ抜いて、抜け出されちゃった!

「えっ!?」

「ふふ〜〜んだ」

流花ちゃんは、素早く起き上がってロープへと走り出した。
そして、戻ってきて私に飛び掛ってきた!

フライングボディーアタック!!

弥生ちゃんにもつかった技ね・・・・・しかし!

「くっ!!・・・」

私は、飛んできた流花ちゃんを受け止めて必死でこらえた!!

「ええーーー!?」
「ええーーー!?」
「ええーーー!?」

みんなから驚きの声が挙がる。

でも・・・

「あ・・・だめ・・・・」

私はフラフラとよろけて・・・・

「キャアッ!!」

後ろへダウン。

結局は、堪え切れなかった〜〜・・・・

「お兄ちゃん、フォールだよ!!」

そのまま私に覆い被さった流花ちゃんが、叫ぶ。

「ワン・・・・・ツ」

朔夜くんが、ツーをカウントする前に肩を挙げた。

「う〜〜残念」

残念そうな声でない流花ちゃんが、私の上から退いた。

ほとんど何も出来ないまま、二度もフォールするなんて・・・・
少々手を抜きすぎたようね。

(少し、本気出さないと・・・)

私はゆっくりと、おきあがり、

「なかなかやるわね」

と、流花ちゃん達に言ってあげると、

「当然だよ!流花たち二人を倒そうなんて、無駄だよ!」

流花ちゃんが得意げに挑発する。

「それはどうかしらね・・・・・行くわよ!」

私は流花ちゃんに向かっていった。

流花ちゃんも私に向かってきて、私達は組み合った。
でも、案の定流花ちゃんはパワー不足ね。
私がちょっと押しただけで、苦しそう。

私は、そんな流花ちゃんを強引に抱え挙げる。

(軽いわよ、流花ちゃん)

そして、そのままマットに叩きつける!

ボディスラム!

「キャアア!!」

ダウンした流花ちゃんに、

「なにしてるの?、立ちなさいよ」

一回強めに踏みつけた。

「ぐぅ〜〜・・」

流花ちゃんが苦しそうに、転がる。
ちょっとかわいそうだけど、まだ終わらせないわよ〜〜!

私は、流花ちゃんの髪を掴んで、

「ほらほら・・・・」

強引に起き上がらせて、その可愛い顔を両手で挟んで〜〜・・・・

ゴンッ

ヘッドバット!!

「ギャンッ!!」

頭を押さえて、フラフラになる流花ちゃん。
その隙に私は、ロープへと走る。

そして、反動で戻ってきてーー、ショルダータックル!!

「アアアーーー!!」

ダウンする流花ちゃん。

ラリアートでも良かったんだけど、それだと終わっちゃうかもしれないから、こっちにしたの。
でも、けっこう効いたみたいね。

とりあえず・・・押さえ込んじゃおうかしら?

「フォール♪」

私は、流花ちゃんの片足を抱えながらフォール!
すかさず、朔夜くんが〜・・

「ワン・・・・・ツー・・・・・」

カウント2が入る。
もしかして、もう終わり?

「ウッ!・・・」

流花ちゃんが、なんとか肩を挙げて返した。

(そうよ、それでいいのよ)

私は流花ちゃんの上から退いてあげる。
流花ちゃんは、少し息を切らせながら起き上がる。

「どうする?、弥生ちゃんと交代する?」

私は、ちょっと意地悪く訊いてみる。

「流花ちゃん、私に代わって!」

弥生ちゃんも、流花ちゃんに言う。

でも、

「イヤッ!」

流花ちゃんは、それを拒否。

そして、そのまま私に向かってきたの!

(体勢が低いから、タックルね)

私は、そのまま組み付いていこうとするんだけど・・・・・・
流花ちゃんに組み付こうとしたら、流花ちゃんが消えちゃった!

「えっ!?・・・・キャッ!!」

左足に激痛が走り、思わず膝をつきそうになる!

流花ちゃんのローキックが、炸裂していた。
素早く私の左側に、移動して蹴りを叩き込んでいたのね。

弥生ちゃん同様、わたしにフェイクをするなんて・・・小学生コンビもやるわね〜〜

「こ〜の〜〜!」

流花ちゃんは、私のバックに回りこんできて・・・・
そして頭を押さえて、ジャンプ!

「キャアアアアアーー」

私は、顔面からマットに叩きつけられちゃった!

フェイスクラッシャー!!

く〜〜やるわね・・流花ちゃん・・・

「まだまだ〜〜!」

流花ちゃんは、うつ伏せに倒れた私の足を取ろうとする。

「そうはさせないわよ!」

私は強引に足を引っこ抜いた。
そして、そのまま起き上がろうとすると・・・・・

「逃がさないもん!!」

首に腕を巻きつけて、スリーパーをかけてきた!

しつこいわね〜〜

「くっ!!」

私は巻きついた腕に手をかけると、一本背負いみたいに流花ちゃんをマットに叩きつけた!

「キャアアーー!!」

私の背に押しつぶされた流花ちゃんが、悲鳴を挙げる。
そして、流花ちゃんはダウン。

私はさっさと起き上がって、ダウンしたままの流花ちゃんの髪を掴んで起き上がらせる。

「イターい・・痛いってばーーー!!」

悲鳴挙げる流花ちゃんを無視して、ヘアーホイップで流花ちゃんを投げる。

「キャーーーーー!!」

かなり痛かったようね・・・泣きそうな悲鳴ね。

フフフ・・・・いい様♪

さてと・・・・

「くぅ・・うう・・・」

流花ちゃんが、フラフラと起き上がってきた・・・・

「とぉーー!」

ドロップキックを、叩き込んであげた!

「キャアアアーーーーーー!!」

見事に炸裂して、丁度弥生ちゃんの待つコーナーまで吹っ飛んだ!!

私のドロップキックは強烈よ♪

そして、コーナーポストに激突して崩れ落ちた。
ここで中央まで持っていってフォールすれば、たぶん勝てるはずなんだけど、

「弥生ちゃんと交代して、流花ちゃんはちょっと休むといいわ」

と、微笑を浮かべながら言ってあげる。
まだまだ終わらせないわよ。

「うう〜〜・・・く・・・」

流花ちゃんは、ロープに手をかけてなんとか起き上がる。

「流花ちゃん!、私と代わって!」

弥生ちゃんは、流花ちゃんに手を伸ばす。

「ごめんね・・・ちょっとお願い・・」

流花ちゃんは、弥生ちゃんとタッチ。

そうそう・・強がっても意味無いわよ〜

それに今度は、弥生ちゃんを可愛がってあげたいし♪

「行きますよ、奈々子さん!!」

リングインした弥生ちゃんが、間合いを取って構える。

「来なさ〜い」

私は笑顔で挑発してあげる。

すると、挑発に乗ったのかしら?
間合いを詰めてきたの。

そして、また右ローキック!

私は左足を挙げてガードするんだけど、でも痛いわよ〜〜・・・・

「ヤッ!ヤッ!」

弥生ちゃんは、さらに連打!!

「ちょっ・・ちょっと・・痛いじゃないの!!」

ガードしきれずに、ヒットし始めてきたの!

やっぱり私って、打撃は苦手〜〜・・・

私はこらえきれずに、弥生ちゃんに強引に組み付いていく。
弥生ちゃんは、それを予想していたらしく・・・少し下がって私の腕を取った。

「えっ!?」

驚く私を・・・

「こーのー!」

ロープへ振った!

そして弥生ちゃんも、ロープへと走っていったみたい・・・・

「くらえーーー!!」

弥生ちゃんが飛んだ!!

お得意の、フライングニ―ルキック!!

「キャアアアアーーーー!!」

まともに喰らっちゃった私は、派出にダウン!!

弥生ちゃんのニールキック・・・凄い威力ね・・・・さすがは空手少女ね・・・・

「まだです!」

弥生ちゃんは、私の髪を掴んで引きずり起こす。

「痛いわよ!ちょっと!!」

私の抗議もう受け付けず、弥生ちゃんは私の後ろの方へと走った。
私は、ちょっとフラフラしちゃって動けない。

そこへ、

「タ――ッ!!」

弥生ちゃんの気合と共に、後ろからかなりの衝撃がきた!!

「キャアアアアアアアアアアッ」

後から、二ールキックを喰らっちゃった・・・・

今度は、前方に派出にダウン!!

これはちょっと厳しいわよ〜〜・・・

「奈々子さん、勝つのは私達です!!」

弥生ちゃんは、私の背中に馬乗りになると、私の顎に手をかけた。

キャメルクラッチをするつもりなんだわ!

「くっ・・」

私は、弥生ちゃんが顎を引っ張るよりも早く彼女の手を掴んだ。
そして、なんとか引っ張られるのを堪えようとする。

極まっちゃったら、きついわよ。

「こ・・の・・・」

弥生ちゃんも、必死で引っ張ろうとする。

でも、させない!

すると、すぐに弥生ちゃんはキャメルクラッチを諦めて、私を起き上がらせることにしたみたい。

私は、髪を引っ張られながら起こされたんだけど、起き上がった瞬間に弥生ちゃんに組み付いて、弥生ちゃんを抱え挙げた!
そして、マットに叩きつける!

「キャアーー!!」

それで終わらせずに、今度は私が弥生ちゃんの髪を掴んで起き上がらせる。

「イタ・・痛い!痛い!」

悲鳴を挙げる弥生ちゃんを、体をくの字に曲げて抱え挙げて〜〜・・そのまま頭からマットに食い込ませる!

パイルドライバー!!

「キャアアーーー!!」

弥生ちゃん、ダウン!

「さっきは、よくもやってくれたわね〜〜」

私は軽めに何発かストンピング。

「キャッ・・あうっ・・キャ」

痛がって転がる弥生ちゃん。
何発か踏みつけた後、今度は弥生ちゃんの足を脇に挟んでそのまま回転して弥生ちゃんを振り回す!!

そう、ジャイアントスイング!!

「イヤ〜〜〜アア〜〜〜〜アア〜〜〜〜」

振り回されながら、悲鳴を挙げる弥生ちゃん

「イ〜チ・・・ニ〜・・・サ〜ン」

綾乃ちゃんが振り回した数を数える。
そして、10回目で弥生ちゃんの足を放して放り投げた!!

「キャーーーーーー!!」

宙に放り出され、そのままマットに叩きつけられる弥生ちゃん。
彼女にとって、これはかなりのダメージね。

倒れたまま動けないみたい。

もっとも私だって、多少目は回ったんだけど〜・・・・
まあ、これくらいはなんとかなるわね。

「ほら〜〜さっきまでの元気はどうしたの?」

私は弥生ちゃんに近づいて、うつ伏せに倒れている彼女をひっくり返しす。

「弥生ちゃん、逃げて!!」

流花ちゃんが叫ぶ。

「残念だけど、それは無理よ」

そう言って私は、弥生ちゃんのの腕を掴んで両足を乗せる。
さっきのお返しに、腕ひしぎをかけてあげるちゃうんだから!

「イヤ・・・」

弥生ちゃんが、力なく自分の手に手をかける。
腕ひしぎが決まらないように抵抗するってわけだけど・・・・無理ね。

「だから無理なのよー!」

私は、徐々に弥生ちゃんの腕を引っ張っていく。

「アグ・・・・グググ・・・・ウウ・・クアーーーー!!」

握り合っていた弥生ちゃんの手が離れた。
弥生ちゃんの腕が伸びて、腕ひしぎが完全に極まった!

(さ〜どうするのかしら、弥生ちゃん?)

「弥生ちゃん、ギブアップ?」

朔夜くんが、弥生ちゃんに訊く・・・・・でも、

「の・・・ノ・・・」

弥生ちゃんはギブしない。

はっきり言って、返すことは無理だと思うのにな〜

「ほらほら〜〜」

「ウググ・・・」

私は腰を上げて、さらに弥生ちゃんの腕を反らしていく。
弥生ちゃんは、僅かに抵抗するんだけど・・それじゃ返すことは無理よ。

「さあ〜ギブしなさい!じゃないと、折れるわよ!!」

もっとも、怪我してもすぐに治してあげるわよ〜ドクターストップは無しって事になっているしね♪

「弥生ちゃ―ん!!」

流花ちゃんが叫んで・・思わずそっちの方を見ると・・・・

「えっ!?・・ちょっと・・・」

いきなり、流花ちゃんがリングに入ってきたの!
私が抗議しようとする間もなく・・・

ドカッ

「キャアアッ」

その前に、蹴りを喰らっちゃって・・・・手を放しちゃった・・・・
弥生ちゃんは、その隙に這うように逃げ出した・・・・

「いった〜〜い・・ちょっと、流花ちゃん!!」

私は起き上がって、自分を蹴った相手・・・流花ちゃんに文句を言う。

「カットは反則でしょ!!」

「そうだぞ流花!リングの外へ戻れ!」

と、朔夜くんが怒鳴ると、

「・・は〜〜い・・・・」

残念そうに、リングの外へ戻る。

まったく・・・・ルール違反よね〜〜
頭にきたから、弥生ちゃんをもっと痛めつけてあげようかしら?

「さて・・」

私は気を取り直して、四つん這いで息を切らしている弥生ちゃんに近づいていく。

「弥生ちゃん!!」

流花ちゃんが叫んだ。
でも、弥生ちゃんは動けないようね。

「さっきの続き行くわよ!弥生ちゃん!!」

私は四つん這いの弥生ちゃんに、後ろから覆い被さって腕を絡め・・・首にも腕を巻きつけた!
さっきの試合で、流花ちゃんも使っていたチキンウイングフェイスロック!!

「アアアアアーーーー!!」

悲鳴を挙げる弥生ちゃんに、

「まだギブなんかしないわよね?」

と、今度は挑発してあげる。

「ギブアップ?」

朔夜くんが聞いても、

「くううううーーーー・・・」

弥生ちゃんは、当然と言うようにもがくけど、まったく抜け出せない。
ガッチリ決まっているから、抜け出すのは無理よ。

「くううーーーくううーーー・・・」

抵抗がなくなってきたわね〜〜・・・・
このままじゃ、ギブされちゃうわ・・・・

それだと、私の気がすまないわよ。

「仕方ないわね・・・・・・」

私は、チキウイングフェイスロックを外した。

「ハアハアハア・・・・え?・・・」

弥生ちゃんは、グッタリと倒れたまま・・・不思議そうに私を見上げる。
なぜ外した?って顔しているわね〜。

当然よ、まだまだ痛めつけたいから

「このっ!!」

弥生ちゃんを強めに踏みつけた!

「ギャウッ!!」

弥生ちゃんが鈍い悲鳴を挙げ、お腹を押さえて転げまわる。
芋虫みたいなその姿が滑稽で、

「フフフ」

と笑っちゃった。

さっきまでの勢いはどうしたのかしら?
ホント、無様ね〜・・・

さ〜てと・・今度は〜何にしようかしら・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
う〜〜ん・・・・・

この技は、朔夜くんにしかかけたくないんだけど・・・ま、いいわね。

「立ちなさい」

私は、弥生ちゃんの髪を掴んで起き上がらせる。

「く・・」

弥生ちゃんはもう、うめくしか出来ないみたい。

(いよいよ限界ね・・・だったら・・・)

そしてそんな弥生ちゃんを、ギュウ〜っと抱き上げる!

そう、ベアハッグ!!

「くあっ!?・・・ああ・・アアアアーーー!!」

体育館に、弥生ちゃんの絶叫が響いた。


14 シスプリ絶体絶命!



「・・・・・なんか・・すごいことやってるな・・あいつら・・・」

「・・・・・・・・」

「うわっ!・・・今・・結構強めに蹴ったよ・・あの人・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「ああ!?今度はベアハッグ!?・・・うわ〜〜・・あの娘本当に悲鳴上げてるよ・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・」

「どうしたのすみれ?・・・そんな恍惚と見惚れちゃって・・・?」

「・・・・・・・・・」



「ぐ・・・アア・・アア・・・・アアアーーーー」

弥生ちゃんが、私に締め付けられてもがいている。
でも、全く外れない。

「無駄よ、弥生ちゃん」

ちなみに私は、本気でベアハッグをしてはいないわよ。
本気でやったら、そろそろギブアップしちゃうし・・・

やっぱり、ギリギリ耐えられるくらいがいいのよね〜痛めつける時は。

「キャ・・アアー・・・ハアハア・・・」

弥生ちゃんの抵抗が、段々弱まってきた。

「弥生ちゃん!!」

流花ちゃんが、悔しそうに叫ぶ。
でも、どうする事もできないわよね〜

「フフフ・・・」

私は弥生ちゃんを抱き上げたまま、流花ちゃんの方を向いて冷たい微笑を浮かべてあげたの。

「く・・・」

流花ちゃんは、悔しそうに私を睨む。
でも、どうすることもできないのよね〜

とりあえず、弥生ちゃんを抱きしめる腕にさらに力を込めてっと・・・・

「アアアアアアアーーーーーー!!」

弥生ちゃんが、さらに大きな悲鳴を挙げる。

「弥生ちゃんっ!!」

流花ちゃんが叫ぶ。

でも、弥生ちゃんの力が抜けていって・・・首が後ろにガクンと、仰け反り・・・・

「ギ・・・ギブア・・・」

そう言い出した途端に私は、

「ハイッ・・・」

ポイッ
ドサッ

私は流花ちゃんの待つコーナーに、弥生ちゃんを放り投げてあげた。

「ウ・・・・・・・・」

弥生ちゃんは、コーナーに倒れたまま・・今度こそ動けない。

「えっと・・・これは・・・」

朔夜くんが、困ったように私と弥生ちゃんたちの方を見る。
ギブアップなのかどうか悩んでいるみたいね。

でも、これって・・完全にギブアップって言っていないから、まだ続行よね?

「どうするの流花ちゃん?・・・これ以上はやめておく?」

私は流花ちゃんを、挑発する。

すると・・・・

「当然だよ、流花たちはまだ負けてないもん!」

と、言い放った。

それに対し、私はフフンと微笑んで流花ちゃんに手招きする。

「くぅ・・・」

流花ちゃんは私を睨むと、

「弥生ちゃん、仇は打つからね・・」

そう言って弥生ちゃんに触れる。

そして、リングに入り・・・弥生ちゃんがリングの外へ出るのを手伝う。

「ハアハア・・・ごめんね・・・流花ちゃん・・・」

弥生ちゃんが場外で座ったまま、かすれた声で言う。
とにかく、彼女はこれ以上戦うのは無理ね。

あとは、流花ちゃんを倒すだけ。

「おいで」

私は流花ちゃんに手招きする。

そしたら、流花ちゃんは構えながら、ジリジリと近づいてきたの。
何かやってくるのかな〜と思っていたんだけど・・・・慎重になっているみたいね。

だったら・・・・

「えいっ!」

私は流花ちゃんに、ローキックを放っていった。
みんなのようにうまくはないけど、そこそこ重い蹴りだと思うわよ。

「くっ」

流花ちゃんが膝を挙げてガード。
さすがに、慣れているわね。

「このっ!」

流花ちゃんも、ローキックを返してきた。
それに対し、私も同じようにガード。

私だって、何度も喰らったりなんかしないわよ。

「なんのっ!」

私は、また蹴り返す!
そして、二人で蹴り合いになった。

ガードしたりガードされたり・・・蹴ったり蹴られたり・・・・・そして・・・

ビシッ

何発目かのローキックが、私に当たった。

「痛いわよ!」

パシッ

「キャッ!!」

私は頭に来て、思わず張り手を流花ちゃんにかましちゃった!

「やったわね〜!」

ピシッ

流花ちゃんが、私に張り手をした。

「そっちこそ!」

私はちょっと頭に来て、流花ちゃんに掴みかかった!

「え!?」

そうしたら・・不意に流花ちゃんが消えて、私の手は虚空を掴んだ!
私は慌てて左右を見たけど、いない・・・・

ということは・・・

「どこ見てんの!」

いきなり足を捕まれちゃった。

やっぱり下!?

「くらえー!」

流花ちゃんは、私の足に自分の足を絡めた。

これは・・かに挾み!?

「キャアアーー!!」

私はうつ伏せにダウン!
不意をつかれたせいか・・・かなり効いたわよ。

「よくもやったわね、このオバン!!」

そう叫びながら、高く飛び上がって空中で一回転して背中から落ちてきた!

背面落し・・セントーンが私の背中に炸裂!!

「アアアアーーーー!!」

あまりの衝撃に、息が詰まっちゃった・・・
流花ちゃんが小柄でも、全体重を乗せたセントーンは強烈ね・・・・

「ほら、起きろ!!」

流花ちゃんが、私の髪を掴んで引きずり起こす。

「ちょ・・痛い・わよ・・」

苦しくて、声が途切れ途切れになりながら言う。

「うるさい!」

流花ちゃんが、ロープへと走る!
そして、戻ってきたところでヒップアタック!!

「アグゥーー」

私の顔面に、強烈にヒットして・・・・そのままダウンしちゃった・・・
これ・・ちょっとヤバイわよね・・・いくらなんでも・・・

だけど・・なんとかする前に、流花ちゃんが私の体を返して、うつ伏せの状態にしたの。
そして足を絡めだした。

「くっ・・・」

なんとか逃げようとしたけど・・できない!

流花ちゃんは、私の足を極めて私の顎を掴んだ!
これって・・流花ちゃんと弥生ちゃんが闘ったときに、流花ちゃんが弥生ちゃんを苦しめた技・・・

「出た、鎌固め!!」

綾乃ちゃんが叫んだ。

だけど、

「違うよ、これは流花の新必殺技・・レインボーブリッジ!!」

・・・・・だって

「アアアアアアアーーーーーーー」

「ギブしろーーー!!」

私は悲鳴を挙げて、キレている流花ちゃんは吼える!
かなり強烈よ、この固め技・・・・

「ギブアップ?」

朔夜くんが訊いてくる。
しかし、冗談じゃないわよ・・・いくらハンディーキャップでも、この私が小学生に負けるなんて・・

「ノーーー!!」

私は叫ぶ。

そんなこと絶対にごめんだわ!
でも、このままじゃ・・いくら私でもギブしちゃう・・・

なんとかしないと・・・・

「ウググググ・・・・グ・・ぬぁめんな・・・クソガキーー!!」

私は、流花ちゃんの腕に手をかけて、渾身の力で外した!

「おおおおおおーーーー!」

綾乃ちゃんが、床を踏み鳴らす。
それと同時に、他からも歓声が挙がった気がするんだけど・・・・・まあ、いいわね。

「ハアハアハアハアハア・・・・・・・・」

「ハアハアハアハアハアハアハアハア・・・・・・・・」

私と流花ちゃんは、マットに倒れたまましばし、息を切らせていた。
流花ちゃんは、もう体力が尽きた頃ね・・・・・

かくいう私も、やばいけど・・・

「お子様の割には、よくがんばったわね・・・」

最初に起き上がったのは、私だった。
でも、流花ちゃんは起き上がれないみたい。

「でも、終わらせてあげる」

足で流花ちゃんをグリグリと踏みながら言う。

「ま・・・負けないもん・・・」

流花ちゃんが、なんとか起き上がろうとしてきた。

これには、私もちょっと驚いちゃった・・・まだ起き上がるなんてね。

「無駄なんだよ、ガキ!」

私は、流花ちゃんを引き起こして抱え挙げた。

「ほらっ!」

そのまま流花ちゃんを、マットにボディースラムで叩きつけた!

「アウゥゥゥーーー」

死にそうな悲鳴を挙げる、流花ちゃん。
なんか私って、完全にヒールになっているわね・・・・言葉使いまで・・

「流・・・流花ちゃん・・・・」

弥生ちゃんが、叫ぶ。

「弥生ちゃん、あなた達の負けよ」

私はそう言うと、流花ちゃんをまた引きずり起こす!
そして、流花ちゃんの体を曲げて抱え上げる体制になる。

流花ちゃんに、いい加減トドメをさしてあげる事にしたの。
朔夜くんの方を見ると、朔夜くんも諦めた表情になっていた。

ごめんね、朔夜くん・・・・・かわいい妹を傷つけてしまって・・・

でも、勝たせてもらうわよ!

「Amen...」

私はクリスチャンみたいに、十字を切ったの。

幽霊がこんなことするのは滑稽だけど・・・・この技をする前に合掌する人もいるし・・・だったらこれもOKかな〜って・・・

・・・・とにかく、



「喰らえーーーー!!」

十字を切った私は、流花ちゃんを抱え上げて・・・そのままマットに叩きつけた!!

パワーボム炸裂ーーー!!!

「キャアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーー!!!!」

マットに叩きつけられ、断末魔の悲鳴を挙げる流花ちゃん!
そして私は、そのままフォールに持っていく。

朔夜くんが、カウントを取る。

「ワン・・・・・ツー・・・・・」

流花ちゃんは、ピクリとも動かない。

「スリーーーーー!!!!」

カウントスリーが入った。

同時に、綾乃ちゃんと他の歓声と拍手が体育館の中で沸きあがった。


カウントスリー・・・・

それが聴こえた瞬間、私は流花ちゃんを放した後・・・・力が抜けて座り込んじゃった。
流花ちゃんも、そのまま大の字になって動けないみたい・・・

長い激闘の末、私はシスタープリセスを下したのね・・・・

まったく・・・・小学生だと思って、こんな無茶はするもんじゃないわね・・・・・
二人が激闘の後じゃなかったら・・・・どうなっていたのか・・・・

でも、とにかく勝ててよかったわ・・・・・

「ふう〜・・・・」

私は、ゆっくりと起き上がって・・・右手を突き上げた。


シスタープリンセス
×堀部流花
川元弥生
(32分42秒 体固め)
(パワーボム)
城ノ内奈々子


15 真打ち登場



「だいじょうぶ?、流花ちゃん弥生ちゃん」

綾乃ちゃんが、リングに入ってきた。

「二人とも、生きてるか?」

朔夜くんが弥生ちゃんをリングへと上げた。

弥生ちゃんは、フラフラと流花ちゃんに近づいて、

「流花ちゃん・・しっかりして」

と、声をかけた。

「うん・・・・なんとか〜・・」

流花ちゃんが綾乃ちゃんに抱き起こされる。

「ごめんね弥生ちゃん・・・仇は討てなかった・・・」

「ううん・・・次は勝とうよ」

と弥生ちゃん

「二人とも手強かったわよ・・・・正直、試合の後でなかったらどうなっていたか・・・」

私はそう言いながらマイクを取って、

「でもね・・あなたたちじゃ、私にはまだまだ勝てないわよ!」

そう言ってあげたの。

そしたら、みんな突然のマイクパフォーマンスに驚いて私の方を見る。

「私に挑戦するには、もっと腕を上げてからにしなさい」

私はそう言ってあげる。

そして朔夜くんにマイクを渡して、流花ちゃんに渡してもらう。
流花ちゃんは、朔夜くんからマイクを奪うと、

「やってみないとわかんないでしょー! 次は流花が勝っちゃうかもよ!」

と、流花ちゃんが言い返してきたの。

続いて弥生ちゃんも、マイクをとって、

「私も、今日の借りはシングルで、絶対に返します!」

二人して挑戦状叩きつけてきたわね〜・・面白くなってきたわよ〜!

でも、それよりも・・・

「三人とも、マイクパフォーマンスはこれまで、彼女達を待たせちゃ悪いよ」

朔夜くんがそう言ってきたの。
朔夜くんも気付いていたようね、あの娘たちが来ている事が。

さすが、武術家といったところかしら?

「二人とも、こっち来なよ」

朔夜くんが、出入り口の方へ向かって言う。

すると、

「よく気付いたね・・」

例の二人・・・神楽ちゃんとすみれちゃんが出てきた。
真打ち登場ってところね。

さて・・・ここからの展開は〜次回に〜・・


つ・づ・く♪


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